【特集】伊藤正樹選手からの高校生へのメッセージ | 日本の学校

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アスリートからの熱いメッセージ

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伊藤 正樹選手 プロフィール

伊藤 正樹選手

トランポリン選手 東栄住宅所属
ロンドンオリンピック日本代表

PROFILE

1988年生まれ。東京都出身。9歳年上の姉に影響されてトランポリンと出合う。小学校3年生の時に、日本トランポリン協会の指定強化育成選手の第一期生に最年少で選ばれる。中学生時代は全日本ジュニア選手権で優勝。その後、金沢学院東高等学校、金沢学院大学へ進学。大学2年生の時には全日本トランポリン競技選手権大会で優勝し、その翌年、翌々年と三連覇を達成。さらに2011年ワールドカップ川崎大会で優勝を果たし、世界一の座に。2012年はロンドン五輪に出場し、4位入賞を果たす。

伊藤 正樹選手の学生時代は・・・

オリンピック出場という夢を叶えるために

伊藤 正樹選手写真
 幼い頃はトランポリンの他に水泳や体操も習っていましたが、小学校3~4年生の頃からトランポリン一本に絞りました。トランポリンの宙に浮く感覚が魅力的で、また当時はどんどん技を覚え、上達しているのを実感できていましたので、楽しくて仕方なかったですね。当時発足されたオリンピック指定強化選手に選ばれたのもちょうどこの時期でした。最年少で選ばれたことはとても名誉でしたが、同時にプレッシャーも感じていました。「同世代の選手には負けられない」と。
 そんな思いをずっと抱えながら練習の日々を過ごしていたころ、2000年のシドニーオリンピックから、トランポリンが正式種目に。当時テレビ中継を見ながら「自分もここに出たい」と、オリンピックに対する憧れが日に日に高まっていったことを覚えています。そして、「トランポリンでオリンピックに出場する」ということが、当時の最大の目標になりました。
 中学時代は全日本ジュニアで優勝。実績を残していたので、進学先もいくつか選択肢がありました。その中のひとつにトランポリンの名門校、金沢学院東高等学校という魅力的な進学先がありましたが、地元を離れて一人暮らしをすることに当時はかなり悩みました。両親や仲間達と離れ、ただトランポリンでオリンピック出場を目指すためだけに行くのですからね。ただ、この高校で通用しない様では、オリンピックにはほど遠い。だから思い切って飛び込むことにしました。
 高校時代は、やはり恩師の福井先生に出会えたことが大きかったと思います。国際レベルの大会では「技の美しさ」が重要視されますが、福井先生はその審美眼がとても優れている有名な指導者で、先生に認めてもらえた演技=世界でも通用するということになります。オリンピック出場を目指す私にとっては、この上ない出会いでした。その福井先生とも相談した結果、高校三年間は結果よりも技の美しさを磨くことを選びました。先生には「目先の結果よりも将来的な事を考えろ」と、口酸っぱく言われ続けてきました。高校3年間は世界で戦うためにひたすら腕を磨き続ける期間でしたね。結果的にこの選択は正しかったと思っています。

大学進学、日本王者、そして夢の舞台オリンピックへ

「勝ち続ける事の難しさ」を実感

伊藤 正樹選手写真
 大学生になってからは大会での結果を求めて技の難度を磨き、徐々に表彰台にも上る様になりました。そして2008年には日本選手権で優勝。直前に行われた北京オリンピックでは代表選手に入ることができずに悔しい思いをしたので、新しいスタートを切った自分がどう評価されるのか、とても楽しみにしていました。だから、優勝という結果を受け「日本王者として世界、特に強豪の中国に勝ちたい」という意識が強くなりました。
 その後、全日本選手権を三連覇しましたが、王者として勝ち続けることは、本当に大変です。挑戦者が王者に勝てば「努力した結果」と称えられますが、王者は「勝って当たり前」と周囲に見られてしまいます。負けたら「努力不足」と。特にトランポリンは最高の実力を持っていても、些細なミスで予選落ちすらありえる競技です。三連覇を達成できた理由に、やはり先ほどの意識の変化があると思います。この頃は自分のスタイルができていたので、試合形式の練習を増やし、試行錯誤しながら自分のスタイルを磨き上げていました。その結果、運にも恵まれたと思いますが、2011年7月のワールドカップ川崎大会で優勝、同年11月にイギリスで行われた世界選手権では3位に入り、「日本の伊藤は強い」と海外勢からも一目置かれるようになりました。
 そして2012年ロンドンオリンピックでは念願の日本代表選手に。憧れの初舞台は4位という結果でした。会場の雰囲気にのまれそうになりましたが、練習の成果は出すことができ、内容には満足でした。ただ、振り返って感じるのは、メダリストとそれ以外の選手の意識の差は明確にあったと思います。僕は「メダルを獲る」という目標でしたが、メダリストたちはあくまで「金メダルを獲る」という意識で、その差は結果に大きく影響しましたね。オリンピック以外の国際大会で何度かメダルを獲っていたので、「このくらいの得点を出せばメダルを獲れるだろう」と思っていましたが、オリンピックは違いました。勝つ事の難しさを改めて感じましたね。
 次のリオデジャネイロオリンピックでは「金メダルを獲る」のが目標。世界を相手に、改めてチャレンジャーとして臨みたいです。

伊藤 正樹選手からのワンポイントアドバイス

常日頃から高い意識を持つこと

伊藤 正樹選手写真
 すでにお話した通り、私は高校に進学してから、練習中は常に「技の美しさ」を意識していました。また、高校はトップレベルの選手が集まっていたので、周りを意識し、共に刺激を受けながら、切磋琢磨していました。さらには全日本王者になった後の意識の変化も、自分を大きく成長させてくれたと思います。
 この様に人は高い意識を持って臨むことで大きく成長できるものです。それを踏まえた上で、以下のアドバイスをさせていただきます。

(1) 試合で発揮できることは、練習で実践してきたことだけ
いくら「今日は試合だ、頑張ろう!」と思っても、練習で培ったレベル以上の力は発揮できません。普段の練習から試合のことを意識できるかどうかが大切です。

(2)競技している自分のイメージを常に作る
トランポリンは自分の思い描く演技のイメージと、審判が見る演技のイメージがいかに合致するかということが、結果につながる競技です。自分を俯瞰して見る感覚を養うことが大切。常に自分の理想のパフォ-マンスを意識しましょう。世界の選手の競技ビデオを見る等、他人の演技を多く見ることが理想のイメージ作りにオススメです。

(3)成長する感覚を意識する
たいていは後になってから気付くものですが、自分が「ステップアップしている」と実感できれば、それは自信につながります。どれだけ高い意識を持って練習に臨むかで、早く気が付けると思いますよ。

伊藤 正樹選手からみんなへメッセージ

好きなものに出会えたら、とことん向き合ってほしい

伊藤 正樹選手写真
 リオデジャネイロオリンピックが終わったら、次は東京オリンピックです。地元開催なので思い入れはありますが、もし出場できず引退することになったとしても、私はトランポリンに関わって生きていたいと思っています。まだまだ認知度の低い競技ですので、トランポリンの楽しさをもっと広めたいですし、ずっと好きなトランポリンと向き合っていられたら幸せですね。
 私の場合は、好きなことをやり続けてきた結果、今ここにいられると思っています。もし皆さんも好きなことがあるのなら、それをずっと続けていってほしい。「好きなことがある」ということはとても幸せなことですから。夢や目標に向かって努力した経験は、きっと将来の糧になると思います。

※プロフィール等は2013年9月時点のものです。

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株式会社JSコーポレーション 代表取締役社長 米田英一