
月城慶一先生 新潟医療福祉大学 医療技術学部 義肢装具自立支援学科
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突然ですが、片足が失われた義足走者による100メートル走世界記録は何秒だと思いますか? なんと、義足での100メート走世界記録は、12秒14(アールコナー選手・カナダ)です。
2008年は北京オリンピック開催の年。そして障がい者によるスポーツの祭典『パラリンピック』の年でもあります。テレビでご覧になって驚いた方も多いと思いますが、世界から集まるアスリートたちは、このように実に素晴らしい記録を出しているのです。それでは、なぜそんなに早く走ることができるのでしょうか?実はそのために様々な知識や技術を駆使して選手の「義手」や「義足」を製作・適合しているのが義肢装具士なのです。
アスリート用の義足の製作には、克服しなくてはいけない問題点がたくさんあります。その1つが「痛みの軽減」です。通常、人が全力疾走すると体重の5倍から8倍もの力が膝や足にかかると言われています。当然、義足を使用される方の場合は、その負荷が義足や装着部分にかかってくるわけです。義肢装具士は、その力を上手く分散し、痛みを生じさせないために専門的な知識や技術を用いて義足を製作するのです。
ためしに自分の太ももを揉んでみて下さい。力を入れていない太ももは、水が入った風船みたいで、中に太い骨があるのがわかると思います。そんな水の入った風船を床に置いて押さえつけたら、グラグラして骨が床に当たってしまうことは想像できますね。ところがその水の入った風船をプラスチックの硬い容器にぴったりと収めたら、今度は硬くしっかりとした構造物に変わるのです。これは、太ももという水風船にかかる圧力が、プラスチック容器との接触部分全体に均等に分散されるという「パスカルの原理」が起こっているからです。だから人が走るときにかかる、体重の5倍から8倍、まれに10倍以上の力も、ぴったりフィットした厚いプラスチック全体で受け止めるため、痛みを感じることがないというわけです。
さらに、ヒザ関節に使われる「油圧抵抗式シリンダー」や、複雑な足の動きに対応する「電動センサー」付きの義足など、医学と工学がミックスされた最新のテクノロジーが、これまで不可能だと思われていた動きを、どんどん可能にしているのです。
義肢装具士はこうした知識や技術を常に研究・応用し、障がいを持った方の日常生活におけるサポートからスポーツ活動のサポートまで幅広く支援しているのです。
(義肢装具自立支援学科 准教授 月城慶一) |