僕は母子家庭で育って、母はいつも仕事で忙しかったし厳しい人だから、怒られたことはあっても未だに褒められたことはないですよ(笑)。僕の相手をしてくれたのは、いつもおばあちゃんでした。そのせいか子供の頃からすごい寂しがり屋なんです。小学校の頃は少年剣道団に入り、中学校でも大して好きでもなかった卓球部に入ったのは、もちろんスポーツが好きだったこともあったけど、一番は友だちとできるだけ一緒にいたかったから。でも常に心の奥底では「母にかまってもらいたい、褒められたい」という思いがあったんだと思います。子供なりに元気でいい子でいようって思っていたんですよ。ところが、そんな僕の環境が大きく変わったのは中学に入ってから。それが保育園から一緒だった幼なじみによるいじめでした。昔は仲がよかったし親同士だってよく知っている間柄なのに。中学2年で同じクラスになると、幼なじみがいきなりいじめっ子に変身したんです。原因は何だったのかわかりませんが、ひょっとしたら小さいときから知っている仲だからこそ、ライバル心みたいなものがあったのかもしれませんね。彼の方が体も大きかったし、気づいたら力でねじ伏せられていました。お古の制服をからかわれたり、我が家の貧しかったことでいじめられたりもしました。苦しい時代でした。いじめから解放されたのは高校に進学してからでした。もともとスポーツは得意だったこともあって、体育の授業でみんなが「おまえ、すごいな」なんて声を掛けてくれて、うちとけていくと友だちもたくさんできた。いじめで萎縮していた中学時代。自分の運命を受け入れるしかないと諦めてしまっていた僕が、恐る恐るでも一つひとつ扉を開けると、新しい自分になれるんだと思えるようになっていきました。
|