【特集】植草歩選手からの高校生へのメッセージ | 日本の学校

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アスリートからの熱いメッセージ

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植草歩選手 プロフィール

植草 歩選手

空手(組手)
2020東京オリンピック出場

PROFILE

1992年7月25日生まれ。千葉県八街市出身。小学3年生から空手を始め、小学5年生で全日本少年少女空手道選手権大会に出場し、3位入賞を果たす。高校は日本体育大学柏高等学校に進学し、高校3年生の時にインターハイにて女子個人・団体ともに3位という成績を残す。帝京大学進学後は、2014年の世界学生空手道選手権大会で優勝を飾るなど国内外で躍進。大学卒業後、2016年に世界選手権で優勝し、2020東京オリンピックに日本代表として初出場した。KARATE1プレミアリーグでは、2023年までに計13回優勝するなど、世界大会で好成績をおさめている。女子68kg超級のなかでは168cmと小柄ながらスピードのある「突き」が持ち味で、速さを武器に国内外の選手を圧倒。一方で、母校である日本体育大学柏高等学校空手部をはじめ、指導者として若い選手の育成にも貢献している。

植草歩選手の学生時代は・・・

初めて出場した全国大会が、1番を目指すきっかけに

植草歩選手写真
 空手は小学3年生から始めました。きっかけは、幼馴染に誘われて近所の空手道場の体験に行ったこと。その時にミット打ちを体験し、「バーン!」とはじける音がとても気持ちよく、体験後すぐ「空手を始めたい」と父に伝えました。
 空手道場には週1回で通っていましたが、最初の1年くらいは基本稽古や正拳突き、形などの基礎的な練習ばかりで、ミット打ちはさせてもらえませんでした。つまらないなと思いながらも、幼馴染と遊びたくて道場に通っていましたね。ただ、父が厳しい人で、空手を始める前に「やるからには黒帯を取るまでやりなさい」と約束していました。なので、通うのが嫌になってもやめたいとは言えなかったのです。
 始めたころは、黒帯を取るまで厳しい道のりだと思っていましたが、飛び級できたこともあり、小学5年生で黒帯になりました。その年には、初めて「全日本少年少女空手道選手権大会」に出場し、結果は3位。これまではメダルや賞状をもらうと、母がケーキを焼いてくれて、父はゲームのカセットを買ってくれたので、全国大会もそれを目標に頑張っていたんですが、この大会をきっかけに全国で戦えるんだと実感し、1番になりたいと思うようにもなりました。上を目指そうと思うきっかけになった大会でしたね。
 中学時代も同じ道場に通っていましたが、当時は空手をやっている女の子が少なく、道場には同世代の練習相手がずっといなかったので、地元の日本体育大学柏高等学校から声をかけていただき、週末は高校生と一緒に練習させてもらうようになりました。それでもやはり練習量が足りなかったので、勝てない試合が続きました。
 中学時代からお世話になっていた日本体育大学柏高等学校に進学してからは、多くの大会に出場できたものの、試合に勝てず悔しい思いをたくさんしました。なかでも難しかったのが団体戦です。個人戦で勝つには自分だけが頑張ればいいことですが、団体戦はそう単純にはいきません。伝統校であれば強い選手が集まりますが、当時の私たちの高校はそうではありませんでした。初心者もいれば、経験者でも試合でなかなか勝てない子もいます。せっかく練習試合に行っても、強いチームと組ませてもらえず、初心者ばかりのチームとしか練習できなかったことも。そうした環境のなかで、強豪校に勝って県で1番、全国で1番を目指すことに、とても厚い壁を感じました。
 それでも粘り強く頑張ってきた結果、高校3年生のインターハイ予選で県内一の強豪校に勝ち、ようやく優勝することができたんです。もう、全国大会で優勝するくらいうれしかったですね。その時は沖縄でインターハイがあり、個人・団体共に3位になりました。ただ、伝統校は取材されて大きく取り上げられるのに、3位になった私たちは空手専門雑誌に小さく写真が載る程度で、それがすごく悔しかったです。無名の学校が全国に行けたとしても、ちゃんと1番を取らないと光が当たらないという現実を知った経験でしたね。だからこそ次は全国で1番を取りたいと強く思いました。小学生の頃から全国への道を一歩ずつ歩んできて、気持ちも高まっていったと感じています。

厳しい環境で続けてきたからこそ、世界の舞台が現実に

世界大会、そしてオリンピック出場。目標を叶え続けて見えたもの。

植草歩選手写真
 国体で優勝したことで、帝京大学に声をかけていただき、特待生で入学しました。正直、空手の名門大学に行くのは怖かったです。両親や高校の先生からの後押しで入学を決意しましたが、案の定厳しすぎて、「私はここにいるべきじゃない!」と入部して3日でやめたいと思いました(笑)。今まで厳しい上下関係や伝統がある学校にいたわけではなかったので、日本一や世界チャンピオンを本気で目指している人ばかりの環境になかなか馴染めませんでした。それでも、特待生で入っているのでやめさせてもらえるわけもなく……。「空手なんてもういいや」と開き直って練習を続けていたら、全日本学生選手権(以下、インカレ)で決勝まで行くことができたんです。翌年にはインカレのチャンピオンになり、日本代表にも選ばれました。最終的には大学2年生の時に世界選手権で3位になり、世界チャンピオンに手が届くところまできていました。高校まではチャンピオンになることは、目に見えないものを追いかけている感覚でしたが、世界の舞台に立てたことで、世界チャンピオンが現実になっていったんです。苦しかったけれど、充実した大学生活だったと思います。
 大学卒業後は、アスリート社員に理解のある警備会社に就職しました。当時、東京オリンピックの広告塔としての活動もしていたこともあり、オリンピックは絶対に出たいという気持ちでいました。中途半端なことはしたくないと思い、フィジカルトレーナーや栄養士、メンタルコーチといった世界で戦うためのサポートチームを自分で動いて整えていきました。帝京大学にはトレーニングルームなどの環境面で、会社には資金面でサポートいただけるよう相談し、おかげでオリンピックには、素晴らしいプロフェッショナルチームで望むことができたと思います。その後スポンサーなどについていただき、恵まれた環境でトレーニングをすることができて、結果としては7位入賞となりました。
 オリンピックが終わってからは、空手を続けるかどうか悩みました。メダルを取っていればすぐに空手をやめていたかもしれませんが、メダルを取れなかったことで心はまだ燃え尽きていなかったんです。そんな時、たまたま海外からセミナーや指導の話をいただいたこともあり、環境を変えて海外に行こうと決めました。3カ月間いろいろな国を回ったことで、自分が生きてきた世界の狭さに気づいたんです。「何がしたい?」と聞かれた時に「何でもいいよ」としか言えなかったんですよね。自分は何がしたいか、どうなりたいか、自分のアイデンティティは何だろうと考えた時に、「もっと空手を通していろいろな世界を見ていきたい。そのために空手を続けていこう」と今後の方向性が見えてきました。今では国内外で若手への指導に取り組むなど、海外に行ったことで文化の違いなども感じることができて視野がぐんと広がったので、行ってよかったなと思っています。

植草歩選手からのワンポイントアドバイス

腰や足など痛めやすい場所は、日々の入念なケアが大切

植草歩選手写真
 現在、母校である日本体育大学柏高等学校の空手部でコーチをしています。指導している学生たちがけが予防として練習前に行っているトレーニングを一部お伝えします。
(1) 腰痛防止になる体幹トレーニング(プランク)…プランクの状態から、片腕ずつ肘を伸ばして肩の真下に手をつき、再び腕を元に戻します。この動きを20回ほど繰り返すことで体幹が鍛えられます。練習前のアップの時に行ってみてください。
(2) 反り腰を防ぐ股関節のストレッチ(仙骨割り)…両膝を床につけて肩幅より少し開き、床にお尻をつけます。両腕を床についてお腹を床に近づけるようにしてうつぶせの体勢になったら、背骨の一番下にある仙骨が伸びるよう意識し、上下左右に少し揺らして30秒ほどストレッチします。
(3) 足のマッサージ…足裏のアーチ部分を手でもみほぐしたり、足の指の間に手の指を入れて足首を回したりしてください。続けてふくらはぎを手でもみほぐすマッサージも。空手は裸足で行う競技なので、足のケアをしないとシンスプリント(すねの内側に痛みが出る症状)になりやすいんです。足はしっかりとほぐすようにしてください。

 私は高校時代に腰痛があったので、現在指導している学生たちには腰痛をなくすため、プランクなどの体幹トレーニングをウォーミングアップとして毎日取り入れるようにしていますね。また、空手は体の柔らかさが重要な競技で、体の可動域が狭いと蹴りも突きもうまく伸びません。そのためストレッチは、練習前のアップだけでなく、自宅でもお風呂上がりなどに行ってみてください。
 筋肉や体幹を鍛えることはもちろんですが、何よりまずはきちんとしたフォームでトレーニングやストレッチを行うことが大事です。トレーニングも練習も、何のためにやっていることなのか意識しながら行うべきだと思うので、指導している学生たちにも都度伝えるようにしています。

MESSAGE

植草歩選手から
みんなへメッセージ

植草歩選手写真

スポーツも勉強も、目の前のことに一生懸命取り組んで

 現在は競技者だけでなく、指導者としてもどんどんチャレンジの幅を広げています。海外からも指導のお話をいただくことがあり、依頼はなるべく受けるようにしています。自分の英語が通じるのか、自分の空手の考え方を認めてもらえるのかなど不安は尽きないですが、なかなかできないような経験やチャンスが目の前に来たらトライしていきたいですし、たとえ失敗したとしてもまた修正していけばいいこと。競技も人生も同じですね。今までは競技者として自分のためだけに頑張っていましたが、これからは自分が得たものを使って人のためにできることがあるなら、挑戦していきたいと思っています。
 高校生の皆さんに伝えたいことは、「なぜスポーツをしているのか、なぜ勉強をしているのかを考えて取り組んでほしい」ということ。部活も勉強も、誰かのためじゃなく自分のために行っていることですし、自分でやると決めたことは、全力でやり切ってほしいと思います。高校3年間で得られるものって、大人になると得られないものばかりです。勉強や部活だけでなく、友達と遊ぶ時間も含め、一日一日を大切にしてほしいですね。私が高校生の時は部活だけに集中していたので、今振り返るともっと学生生活を楽しんだらよかったなと思っているんです。部活の時間、勉強の時間、友達と過ごす時間、それぞれメリハリをつけて学生生活を過ごすことで、大人になって振り返った時に、「高校生活は充実していたな」と思えるはず。何事も一生懸命に取り組んでもらいたいです。

※掲載内容は2024年3月の取材時のものです。

清水 希容選手
清水 希容選手(空手家)
社会の中で生きていく、人間力を身につけてほしい
角田 信朗さん

2005年10月

角田 信朗さん(格闘家)
ヒーローへの憧れが、いつしか自分の目標に

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株式会社JSコーポレーション 代表取締役社長 米田英一