PROFILE
1970年7月17日生まれ。神奈川県横浜市出身。小学校3年生よりバスケットボールを始め、北陸高校では全国大会で優勝。高校ナンバー1選手と呼ばれる。89年に全日本ジュニアに選ばれ、中央大学時代は全日本Aチームに。そして93年、いすゞ自動車へ入団し、第68回全日本総合選手権大会優勝。その後もいすゞ自動車や全日本で活躍。02年、アイシン精機へ移籍とともに、財団法人日本バスケットボール協会プロフェッショナルプレーヤー登録をしてプロ宣言。04年には9年連続BEST5に選ばれる日本を代表するバスケットボール選手である。
佐古 賢一選手の学生時代・・・
野球が一番、バスケは消極的でしたね
小学校のころは、野球が一番好きでしたね。リトルリーグに入ったのが小学校3年生。ちょうど王選手が756号本塁打を打ったころです。バスケットボールは、父親が以前やっていたこともあって、野球と同じ小学校3年から始めましたが、当初はあくまでも野球が中心。バスケには積極的じゃなかったですね。だって体力的には上級生に勝てなかったし、ただ逃げ回っているって感じでした(笑)。でも、どちらもレギュラーになると、練習がある日曜日には、バスケと野球の友達が迎えに来るんです。目の前でどちらかに行くかを選択しなくちゃいけない状況に毎週迫られていました(笑)。そのころには、野球でもバスケでも自分がメインでプレーできる楽しさを感じ始めていたと思います。そのうえ、バスケと野球をやりながら塾にも通って、私立中学に行こうと受験したんですが、失敗。それまで何でも人よりできるという自信があったんですが、もろくも砕けた感じでした。これがボクにとっての初めての挫折でしょうね。
友達や家族をガッカリさせてはいけない
北陸高校は全国大会の常連校だけあって、1年生のころは何が大変だったか覚えていないくらい大変でしたね。それまで親元で暮らしていますから、寮生活でまず必要なモノが分からない。ハブラシに歯磨き粉に石けん……。何一つやったことないじゃないですか(笑)。それだけならまだいいんですが、朝6時に起きて掃除、7時から朝練して授業の後は16時~21時まで夕練。その後も1年生に与えられたメニューをこなして、帰るころには22時30分なんてことも、ざらにありました。そんな状況が2~3ヶ月続くんです。14人入った部員のなかで残ったのが8人。まったく逃げなかったのは、ボクを含めて2人だけ。そんなときに思ったのが、神奈川で送り出してくれた仲間や家族たちのこと。自分で決めたことだし、彼らをガッカリさせてはいけないと思って、意地でも逃げ出せなかったですね。
そんな生活の末、高校3年生のとき、インターハイで優勝して高校ナンバー1選手と言われるようになってました。当初は日本一になるなんて頭に全然なかったし、バスケにそこまで興味がなかった自分が何故ここにいるんだろうと考えた時期がありました。そこからですね、自分がバスケで有名になることを目標にしたのは。高校の最後に全日本ジュニアに選ばれて、初めてアジア大会に出ました。ジャパンをつけたとき、「Aチーム」になりたいという新たな目標ができました。中央大学に進学したときも、いろんな選手がいっぱいいて、チャレンジしがいのある世界だと思いましたし、常に上手い人を探してチャレンジすることに喜びを見出していましたね。そのおかげもあって、大学3年のときに念願の「Aチーム」に入ることができたんです。そして気づいたことは、常にチャレンジし続ける気持ちをいかに保つかが一番大切ということ。今でも、その気持ちを忘れていません。
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佐古 賢一選手からのワンポイントアドバイス
バスケで上を目指すなら、姿勢にこだわる
ボクの身長は179cm。2mの選手がざらにいるバスケットの世界では、ホントに小さいですね。当然、身長の高い人の方が有利に決まっていますが、バスケットはシュートを打つだけのスポーツではありません。チーム全体として勝つためには、それぞれの得意な部分をいかにピックアップできるかが大切なんです。つまり、背の高いシュート力のある人にいいパスを出す選手も必要ということ。それがボクがやっている「ポイントゲッター」というポジションなんです。
バスケットに限らずスポーツには、基礎トレーニングやチーム練習が大切です。その中でも、僕が特にアドバイスしたいのは、
【プレーの姿勢を大切にする】
(1)ドリブルの姿勢
ドリブルでは、ついつい前のめりの姿勢になりがちですが、それでは前方しか見えないし、動き出しのロスが大きくなってしまいます。なにより、肩より下からのパスが出せません。
(2)直立の姿勢
直立のリラックスした姿勢を保つようにしてください。視界も広くなるし、肩から上はもちろん、後ろにもパスを出しやすくなるハズです。
バスケットでもっと上を目指したいと思っているならば、「姿勢」が一番大事だと思います。フェイントをかけたパスを出すこともできます。「アイツしか出せないパス」と言われるのがポイントゲッターとして最高の褒め言葉ですからね。
佐古 賢一選手からみんなへメッセージ
プラス思考が、自分を高めるためにはとても大切
バスケットボールはチームプレーのスポーツ。自分一人では何もできません。40分戦っても、最終的に1点、2点で泣くこともあるスポーツです。そういう意味で、人を信じなければ何もできません。そして、最後まで勝ちを信じることがいかに大切かも学びました。例えば、試合で負け数が増えてくると、ついつい他人を責めてしまうこともあります。マイナス志向になってもいいことなんてないのに。でも、一つの勝ちから、嫌なムードに風穴を開けることはできます。たったひとつの「勝利」というプラス志向からチームをガラリと変えることができるんです。これはドラマの世界だけの話ではなく、誰の日常にもあり得ることです。例えば、先生やコーチ、チームメイトから注意されたことを、自分の欠点と思うのではなく、隠れた長所を引き出してくれていると考えてみてください。だって、できそうもないことを注意したりしないでしょ? 「ひょっとしたら自分でも気づかない武器を教えてくれているかも」。そういうプラス志向が、自分を高めるためにはとても大切だと思います。
※この記事は2006年2月に取材したものです。プロフィール等は取材時点のものですので、ご了承ください。
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