教職員のための
教育制度を紐解く
2040年を見据えた私立大学の振興方策とは
2025年12月
2 中間報告の挙げる私大振興策をどう見るか?(2)
メリハリのついた私学助成への転換
人材養成の面でこれほど重要な役割を果たしている私大に対して、学生一人当たりの国庫支援が国立大に比べてなぜ11分の1に留まっているのでしょうか。なぜ、私大の学生・保護者が、毎年3兆5,150億円もの負担を強いられなければならないのでしょうか。
そうした疑問に対する中間報告の答えは、私学助成の増額ではなく、額はほぼそのままにして4. 2026年度概算要求では、私大に対する経常費補助は、3,124億円(2025年度比145億円増)に留まっている。補助額は、2011年度の3,385億円以降減額が続き、2021年度にはついに3千億円を割り込み、今日に至っている。[4]「一律の配分から、メリハリ・重点化への転換を図る。」というものです。そして、「重点化」の対象は、「地域から必要とされる人材育成を担う地方大学」となっています。地域から必要とされるかどうかは、誰がどのような基準で決めるのでしょうか。それは、全国273の「地域連携プラットフォーム」に委ねられている5. 文科省ガイドラインによる。[5]ようですが、利害の異なる国公私大がメンバーの団体に、そのような調整が可能でしょうか。
私大強化策としての統合
また、私大変革への「支援」と言いますが、内実は破綻リスクの高い私大に対する「経営指導の強化」、「学校法人間の連携・合併、円滑な撤退に向けた支援」です。合併については、「自学を、譲渡する側として興味がある」と回答した私大は549校中わずか16校2.9%、「他の学校や学部等を、受入側として興味がある」と回答した私大も41校7.5%に留まっており、現実的な解決策とは言えません。
ちなみに、統合に消極的な理由としては、「統合のノウハウの不足」「統合先候補を探すこと」「統合先候補との交渉」「統合先の教育面や財政面などの精査」「自学内での統合に向けた意思決定」「統合先との統合後の教育内容の調整」「統合先との教職員の人事面での調整」などが上位に挙がっています6. 有識者会議第1回会議提出「参考データ・事例集」41~43p。[6]が、どれをとっても大変ですから、「統合」が私大強化策の決め手とはとても言えない状況です。加えて、100を優に超えるキリスト系、仏教系、神道系など宗教系私大の存在、建学の理念の多様さが統合の障害になります。
統合より機能的連携を
私大としては、ハードルの高い統合より、大学間の人的資源やシステムの共有化、開設科目の連携などは、面倒な協議を経ることなく協定一つで直ちに実現可能であり、国からの補助金7. 「複数大学等の連携による機能の共同化・高度化を通じた経営改革支援事業」。1件3,500万円。[7]も見込むことができます。連合大学院制度8. 吉備国際大学通信制課程と九州医療科学大学による連合国際協力研究科。[8]、教育課程の共同実施制度9. 東京女子医大と早大による共同先端生命医科学専攻(2010年)など。[9]など、複数大学の教育資源を持ち寄って学部、大学院の教育を展開することも可能です。国立大に比べて私大では、これらの制度の活用が進んでおらず、今後もっと導入を検討すべきと思われます。
私大の撤退とともに国公立大の学部定員縮小による規模の適正化を
「経常収支差額が直近3か年の決算で全てマイナス」などとなっている一部私大の「円滑な撤退に向けた支援」については、学生の保護等の観点からも必要ですが、一方で、少子化に伴って公立小中高校の統合が行われたように、多く税金で賄われる国公立大の人文社会科学系学部の定員縮小(大学院への定員振替を含む)を行う必要があります。手厚い公的支援により、世界的に見ても低額の授業料10. 米国カリフォルニア大学(州立)の授業料は、州内学生年間約230万円、州外学生約820万円(1ドル150円換算)。[10]というアドバンテージにより、私大に比べて学生確保が容易な国公立大であるからこそ少子化局面では定員に関し抑制的に対応することが必要のはずですし、学生の質の確保にもつながります。定員減は、運営費交付金や教員定数の削減につながるという不安があるので、減員しても交付金は減らさず(むしろ増額)、教員数も維持すれば、大学側の反対も抑えられます。



