PROFILE
1987年9月18日生まれ。大阪府高槻市出身。小学生時代は高槻市内のサッカーチームに所属するサッカー少年だったが、中学進学とともに陸上部へ入部。中学時代は大阪府下で3位という好成績を残し陸上の名門校である大阪高校に進学。以降、次々と記録を伸ばし2004年のインターハイ400mで優勝、同年の国民体育大会・少年A400mでも45秒89の日本高校新記録で優勝。翌年には高校生でありながら日本選手権400m優勝など、次々と記録を塗り替えていった。2006年には陸上競技の強豪・法政大学に進学。2007年には世界陸上選手権、2008年は北京オリンピック出場など、今後も世界舞台での活躍が期待される。現在、日本選手権で4連覇中。金丸 祐三選手の学生時代は・・・
人より速く走れることの面白さ、それが原動力だった
中学で陸上を選んだのは、足を活かせる競技がしたかったから。走ること自体も好きだったけど、何より「人より速く走れる面白さ」も感じていたし、競い合って勝つことが好きだったんですよ。勝負にこだわる性格ですから(笑)。
中学の陸上部は、監督が熱心だったおかげもあり大阪府3位の記録を持つまでになれて、大阪高校への進学が決まったんです。大阪高校は全国的に短距離の名門校で、選手のレベルも高かったし、取り巻く環境もがらりと変わりました。でも、刺激的な環境だからこそ「自分をどんどん出して勝負していこう!」という意識が強くなってきました。
高校時代は練習が中心の生活で一般の学生のように遊ぶことはなかったけれど、クラブの雰囲気がすごくよくて、先輩や仲間と仲が良かったので、練習も楽しかったです。学校の帰りには行きつけのたこ焼き屋さんに毎日のように通ったりして(笑)。みんな目標があったから充実していたんだと思います。
高校生新記録、そして世界の舞台へ・・・
記録が伸びるたびに、目標が具体化していった
実際に高校に進んでから記録もどんどん伸びていたし、当時の高校記録に1秒差まで近づいていたので、この調子でいけば来年は新記録だという狙いはありました。そのステップにするための2004年の国体でしたが、思った以上に記録が伸び高校新記録を出すことができ、僕自身が一番ビックリしました(笑)。
周りにレベルの高い先輩や同級生がいて、すごくいい刺激になっていたから、それが高校新記録につながったと思います。でも周りの目は「たまたまじゃないか」という感じもあって、「じゃあ、来年はもっと頑張ってさらに記録を塗り替えてやろう」と、いい意味でプレッシャーを感じることができましたね。
この頃から「世界のメダルも狙えるかも」という気持ちが強くなってきました。周りの期待も大きくなったし、何より自分自身の期待がどんどん大きくなっていきました。
そして迎えた2007年の世界陸上、2008年の北京オリンピック。世界のトップアスリートたちが一堂に会する舞台ですから、雰囲気や緊張感、高揚感は特別なものがありますね。経験できることや学ぶことが多かったと思います。
日本代表選手同士で話す機会も多かったんですが、例えば大先輩の朝原選手が自分の経験について話してくれることは、全て僕にとってはアドバイスになっていました。独特の緊張感や高揚感を体験できたことも自分にとって大きかったし、「必ず次へのステップにしてやる」という思いが強くなりました。
金丸 祐三選手からのワンポイントアドバイス
どんな練習も、意味を考えて臨む
(1)走る、ウエイトトレーニングなど、練習のひとつひとつの意味を理解し、イメージをしっかり持ってやること。速くなるための意識が大事です。
(2)基本練習プラス、自分自身にあった強化プログラムを考えながらどんどん試してみる。そして長所を伸ばし、短所をただすことが重要です。
(3)時間をかけて必死に走るだけではなく、走りの中で考え、集中する努力も必要です。特に陸上競技は走っただけ結果が出るというスポーツではないので、集中力や精神力も大きな要素となります。そのメンタル面を強化することも大事です。
(4)ウエイトトレーニングは瞬発力を鍛えるのに効果的です。特に短距離ではスタートの瞬発力がタイムを大きく左右するので、バーベルを使ったハイクリーンやスクワットは僕もよくやっています。
(5)健康管理や体を内面から鍛えることもアスリートには大事なことです。食事は体作りのために、重要だと考えています。僕の場合は特に朝食はしっかりと、栄養バランスのいいものを。そして睡眠時間をしっかりとって疲れをためない。体や筋肉を休息させることも大事な練習のひとつです。
他にも試合前に体の緊張や堅さをほぐすために生まれたのが「金丸ダンス」。最初は、フォームに少し堅さがあったので自己暗示的に体をいろいろと動かしていましたが、自分の中の「げんかつぎ」でもあります。これもメンタル面を考えた僕なりの練習スタイルのひとつですね。
練習には、これが正解というのはなくて、人それぞれのタイプにあった練習があると思います。それを見つけることは、自分にしかない個性を引き出し、のばしていくことにもつながると思います。
※この記事は2009年2月に取材したものです。プロフィール等は取材時点のものですので、ご了承ください。
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