【特集】迫田さおり選手からの高校生へのメッセージ | 日本の学校

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アスリートからの熱いメッセージ

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迫田 さおりさん プロフィール

迫田 さおりさん

元バレーボール選手
ロンドンオリンピック バレーボール女子銅メダリスト

PROFILE

1987年12月18日生まれ。鹿児島県鹿児島市出身。小学3年でバレーボールを始め、鹿児島県立鹿児島西高等学校(現・鹿児島県立明桜館高等学校)卒業後の2006年にVリーグの東レアローズに入団。2010年4月からは、全日本女子バレーボール代表登録メンバーとなり、数多くの世界大会で活躍。2012年8月のロンドンオリンピックでは、28年ぶりのメダル獲得に大きく貢献。2016年のリオデジャネイロオリンピックにも出場し、5位入賞。2017年5月30日に東レアローズを退団し、現役を引退。現在はバレーボール主要大会の解説を始め、バレーボール教室など幅広く活動している。

迫田 さおりさんの学生時代は・・・

高校3年間のバレーボールは結果より「楽しむこと」にこだわった

迫田 さおりさん写真
 私は小学3年のときに、2つ上の姉の影響でバレーボールを始めました。もともと身体を動かすのが好きだったこともあり、始めた当初から楽しくプレーしていたのですが、中学生になると別のスポーツもやってみたいと考えるように。当時は、体育の授業で楽しいと感じていたバドミントン部に入りたいと思っていました。しかし父親から、「小学生のときにバレーボールを指導してくれた先生方の想いも背負って、中学でも続けた方がいいのではないか」と言われて……。その言葉をきっかけに結局バレーボールを続けることに決めました。
 入学した中学校は、鹿児島県の中でもバレーボールの強豪校。「勝つことが当たり前」の環境だったので、練習も厳しく、苦しい思いをすることも多くありました。しかしその中でも幸運だったのは、仲間たちに恵まれていたこと。プレッシャーがある中でも、同じ想いをもって支え合う仲間たちがいてくれたので、3年間なんとか頑張ることができました。
 その後、スポーツ推薦で鹿児島県立鹿児島西高等学校(現・鹿児島県立明桜館高等学校)に入学。いくつか声を掛けていただいた中でこの高校を選んだのは、全国大会常連のような強豪校ではなかったからです。私は、高校では「勝たなければならない」バレーボールではなく、ただ純粋に楽しくバレーボールがしたいと思っていました。この高校なら、強豪校を倒す“チャレンジャー”としてバレーボールが楽しめるのではないかと考えたんです。さらに、姉が通っていた高校だったことも安心材料となり、入学を決意しました。
 結果的に、高校3年間は本当に楽しくバレーボールをすることができました。「私たちのチームはこうあらねばならない」というプレッシャーもなく、自分たちらしさを全面に出せた最高のチームだったと思います。だからこそ結果もついてきて、県で2位という好成績を残すことができました。さらに、高校3年の時には国体にも出場。実はこの国体が実業団入りのきっかけになりました。国体で私のプレーを見た東レアローズの方が声を掛けてくださり、高校にも指導に来てくれるようになったんです。しかし当時の私は、高校を卒業したら地元で就職するものだと当然のように考えていて、「実業団」の存在すら知りませんでした。それでも、監督から「東レアローズならバレーボールの技術だけでなく、人間としても成長できると思う」とすすめられたことが後押しとなり、結局は入団することを決めました。今振り返ると、当時は何も知らなかったからこそ決断できたのだと思います。

最初は苦労の連続だった、「実業団」でのバレーボール

チームメイトに支えられ、世界で活躍するプレーヤーに

迫田 さおりさん写真
 東レアローズに入団してすぐに「自分はとんでもないところに来てしまった」と感じました。実業団のバレーボールは、練習を一日中させてもらえる環境にある一方で、社会人としてお金をもらっているので結果を出さなければなりません。高校まで自分がやってきたバレーボールとは全く違って、本当に厳しい世界だと痛感しました。また、周囲の先輩たちとのバレーボールに対する気持ちの温度差も感じていました。なぜ自分はここに来たのか。なぜこのチームに声を掛けてもらえたのか。当時はそんなことばかりを考え、悩んでいました。さらに辛かったのは、ボールの用意や掃除など、1年目の選手としてやるべき仕事すらうまくできなかったこと。ミスをしたり気配りができなかったりして、監督や先輩からいつも怒られ、最後にはあきれられていました。しかし先輩たちはコートの外ではとても優しくて、怒った理由をきちんと説明してくれたり、できたことを褒めてくれたりと、しっかりケアをしてくれたんです。私をおいてけぼりにすることなく、常に目線を合わせて、根気強く接してくれる先輩たちのおかげで、なんとか自分を奮い立たせることができました。
 東レアローズに入団して初めて出場した試合は、私の競技人生の中でも特に印象に残っています。私はそのときセンターコートでプレーすること自体が初めてで、コートに足を踏み入れた瞬間、客席からの視線や選手たちの熱量に“眩しさ”を感じました。最初は「こんなところで、平常心でプレーできるわけない!」と思いましたね(笑)。試合では、記念すべき最初の1点を私に決めさせようと、先輩たちが何度もトスを上げてくれて、決めたときにはチーム全員が喜んでくれました。サポーターの皆さんも温かく応援してくださり、「こんな場所でバレーボールができるなんて幸せだ」と感じたことを覚えています。
 その後、2010年に日本代表に選出され、2年後にはロンドンオリンピックに出場。チームは銅メダルを獲得しました。しかし私はその後に肩を壊してしまい、一時はバレーボールに触ることもできませんでした。焦りや苛立ちからトレーナーさんに八つ当たりしたり、喧嘩になったりしたことも。それでもなんとかコートに復帰し、リオオリンピック出場も果たしました。しかしリオオリンピックの後、身体よりも気持ちの方がついていけなくなってしまって……。周囲の人たちを上回る気持ちの熱量がもてなくなったことに気づき、引退を決意しました。
 自分の競技人生を振り返ると、思い出すのは辛くて苦しいことばかりですが、最後に思い浮かぶのは、仲間の笑顔や喜び合った瞬間のことです。これまでたくさんの壁にぶつかりましたが、決して私一人で乗り越えてきたわけではなく、皆に乗り越えさせてもらいました。支えてくれる皆がいたからこそ、私は最後までバレーボールをやりきることができたのだと思っています。

迫田 さおりさんからのワンポイントアドバイス

自分の身体の変化に気づけると、トレーニングは面白くなる

迫田 さおりさん写真
 私が実践していた、下半身を鍛える体幹トレーニングと上半身を鍛えるトレーニングをそれぞれご紹介します。

(1)下半身を鍛える体幹トレーニング…どのスポーツでも欠かせない体幹トレーニングは、バレーボールでも、空中姿勢をぶらさず保つためにとても重要です。私がトレーナーさんから教わった体幹トレーニングを2つお伝えします。まず1つが、プランクの姿勢で、足を上げ下げするトレーニング。お尻が傾かないように気を付けながら、足先だけではなく股関節から動かします。また、膝を曲げないようにすることもポイントです。まずはプランクから始めて、できるようになってきたらチャレンジしてみてください。2つ目が、膝を床に付けた状態で行うサイドプランク。まず、横向きに寝ころんだ状態で肘と膝を付き、膝から下はお尻に付けるようにして折りたたみます。次に、お腹や太ももが床に付かないよう、頭から膝を一直線にキープしながら、床に付いてない方の足を上げ下げします。足は股関節から動かし、膝と膝を合わせるイメージです。顎を下げないようにすることも意識しましょう。左右10回ずつで1セット。これを3セットできるようになるのが理想です。

(2)上半身を鍛えるトレーニング…強いスパイクを打つには上半身の筋肉を鍛えることも大切です。中でも、上半身に筋肉の付きにくい私が、よくやっていたのが腕立て伏せ。道具を使わず自分の身体だけでできますが、しっかりやるととてもしんどくて、効果が期待できるトレーニングです。手をつく幅は肩幅より少し広めに。最初は膝が床についた状態でも良いので、ラクにできるようになってきたら、膝をつかずにやってみてください。

 私自身、トレーニングは嫌いで、できることならやりたくないと思っていました(笑)。それでも頑張ってやっていたのは、自分の身体が変化していくことが分かるととてもうれしかったからです。トレーニングはやった分だけ、身体が必ず応えてくれます。この喜びや達成感がなければ、トレーニングは絶対に面白くないし、ただただ辛いだけになってしまうはず。だから皆さんには、「明日すぐに結果を出そう」なんて思わず、ぜひできることをできる回数から始めて、継続して取り組んでほしいです。

迫田 さおりさんからみんなへメッセージ

がむしゃらに突っ走れる時間を大切にしてほしい

迫田 さおりさん写真
 私は今、子どもたちやママさんにバレーボールを教えています。教えることを通じて、私自身もバレーボールの魅力をあらためて感じたり、皆さんからパワーや刺激をもらったりしています。今後も機会がいただける限り、大好きなバレーボールに携われる活動をぜひ続けていきたいです。
 そして高校生の皆さんには、「目標に向かってがむしゃらに突っ走れるのは、本当に最高なことだよ!」と伝えたいです。好きなことに没頭できる学生時代は、本当に貴重な時間だと思います。私自身、学生のときは気付いていませんでしたが、大人になると「仲間と一緒にがむしゃらに頑張る」って、なかなか経験できなくなるんですよね。だから私は今でも、部活に打ち込んでいる学生たちを見ると「いいなぁ~!」と心から羨ましくなります。もちろん楽しいことばかりではなく、辛いことやうまくいかないこともたくさんあるし、どうしても結果を求められることもある。それでも大事なのは、目標に向かって日々頑張っている時間そのものだと私は思います。高校生の皆さんには、その貴重な時間を宝物のように大切にしながら過ごしてほしいです。

※掲載内容は2023年4月の取材時のものです。

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小野寺 太志選手
小野寺 太志選手(バレーボール選手)
精一杯挑戦して、後悔のない密度の濃い時間を過ごしてほしい
江畑 幸子さん
江畑 幸子さん(元バレーボール選手)
自分にとって「楽しいこと」は、武器になり、自信になる
井上 香織選手
井上 香織選手(元バレーボール選手)
苦しくても前を向けたのは夢があったから
柳田 将洋選手
柳田 将洋選手(バレーボール選手)
勝つことの楽しさ、積み上げることの大事さを伝えたい
福澤 達哉選手
福澤 達哉選手(バレーボール選手 全日本代表)
向上心こそが、夢に近づく一番の方法
清水 邦広選手
清水 邦広選手(バレーボール選手 全日本代表)
楽しいこと、悔しいことがあったから今がある
石島 雄介選手
石島 雄介選手(バレーボール選手)
学生だからこそ、今やるべきことがあるはず
高橋 みゆき選手
高橋 みゆき選手(元バレーボール選手)
ハンデを、自分の最大の武器にする
山本 愛選手
山本 愛選手(バレーボール選手)
経験できること、人との出会いを大切に
越川 優選手
越川 優選手(バレーボール 北京オリンピック日本代表)
夢のままで終わりたくない、だから決して諦めない!
山本 隆弘選手
山本 隆弘選手(バレーボール日本代表)
時には自分に対して、厳しさも必要
吉原 知子さん

2007年2月

妹背牛商業高等学校 出身
吉原 知子さん(元バレーボール選手・日本代表)
限界を作らずに、夢を持ってチャレンジしてほしい
竹下 佳江選手
竹下 佳江選手(バレーボール選手)
一度逃した夢、だからこそ絶対につかみたかった
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加藤 陽一選手(プロバレーボール選手)
今すべきことを目標にひとつずつステップアップしていく
大林 素子さん
大林 素子さん(元バレーボール日本代表 スポーツキャスター)
今しかない、チャレンジできる時を大切にしてください。

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株式会社JSコーポレーション 代表取締役社長 米田英一