PROFILE
1986年3月16日生まれ。岡山県倉敷市出身。7歳からスケートを始め、中学時代には全国中学校大会2連覇や全日本ジュニア選手権優勝などその存在が注目を集めるようになった。そして2002年には日本男子として初めて世界ジュニア選手権で優勝を飾り、以降、国内外の大会で活躍し成績を残してきた。2006年には怪我を乗り越えトリノオリンピックに初出場。続く2010年のバンクーバーオリンピックでは日本男子初となる銅メダルを獲得。さらに同年の世界選手権では日本男子初となる金メダルを獲得しフィギュアスケート人気は急上昇、日本中を沸かせた。同時に世界中で日本人選手の活躍は勢いを増し、日本フィギュア界の黄金時代が始まった。3度目の出場となった2014年ソチオリンピックでは6位入賞。同年引退を発表しプロスケーターとして活動を始めた。その後はアイスショーや歌舞伎とフィギュアスケートのコラボレーションとして話題を集めた「氷艶hyoen2017-破沙羅-」に出演など意欲的に活動し、2018年には競技への復帰を表明した。2020年からは村元哉中選手をパートナーにアイスダンスに転向、2022年の全日本選手権で優勝を果たしている。2023年競技会より引退、現在はショースケーターとして幅広く活躍している。高橋大輔さんの学生時代は・・・
中学生から倉敷を拠点に大阪、仙台へと練習に通うように
その後は全国中学校大会2連覇や全日本ジュニア選手権優勝、2002年には世界ジュニア選手権優勝と順調な時期もありましたが、本格的にシニアに参戦してからは思うような成果が出せない時期もありました。特に関西大学に入学した当初は長光コーチの自宅に下宿させてもらうなど、新しい環境に戸惑っていたのかスケートに集中できていなかったのかもしれません。当時、関西大学もまだフィギュアで有名でもなかったし、僕が入学した頃からスポーツにもフィギュアにも力を入れるようになってきた転換期でした。
同時に僕の中では、初めてのオリンピックシーズンが始まりました。2005年の世界選手権は翌年のトリノオリンピック出場枠が決まるという大事な大会で、日本代表として本田武史選手とともに出場しました。ところが本田選手が怪我で棄権したため僕が出場枠という大きな期待を背負うことになりましたが結果は15位。出場枠は一人になってしまい「一人しか行けないのなら絶対に行きたい」と強く思ったのがオリンピックへの本当の挑戦の始まりであり、ターニングポイントだったと思います。
2度目のオリンピックへ、そしてアジア人初の表彰台へ・・・
トリノの荒川選手のように、オリンピックを楽しもう!
そして新たなオリンピックへの挑戦のシーズンが始まり、全日本選手権やグランプリシリーズ、世界選手権と着実に結果を積み重ねてきましたが、2008年10月に大きな怪我をして1シーズンまともに滑ることができませんでした。この時はすごく追い込まれていたと思います。リハビリや今できるトレーニングを黙々とこなし、バンクーバーオリンピックの1ヶ月前にカナダに入り、やっと自分らしく滑れるようになっていました。このときの気持ちは、オリンピック本番では久しぶりに人と競い合えることがすごく楽しみでもありました。そして「トリノでの荒川さんのように楽しく過ごそう」と心がけていた結果が、あの演技とメダルに繋がったと思います。
オリンピックへの挑戦はその後も続きましたが、なかなかモチベーションが上がらない時期もありました。そして3度目の出場となったソチオリンピック後の10月に引退を表明し、引退後はアイスショーをはじめ、今までできなかったことに色々と挑戦させてもらいましたが、やはり自分にはスケートという軸が必要だという思いと自分自身のスケートを取り戻したい気持ちでシングル復帰を決めました。
シングルに復帰して約1年後、村元哉中選手からオファーをいただき、以前から興味のあったアイスダンスに挑戦しようと思いました。カップル競技もやってみたかったし、僕にとってはプラスになると思ったからです。2020年シーズンから約4年間、アイスダンスで数々の大会に出場しましたが、僕の競技人生において一番印象深いのが村元選手と出場した2023年の世界選手権でした。競技引退を決めていたので、この景色を見るのもこれで最後という思いと、選手としてはやり切った思いで挑んだ大会だったからです。
高橋大輔さんからのワンポイントアドバイス
つらい練習もメリハリをつけて、頑張りすぎない方がいい
僕の場合は高校生までは週末に大阪などでコーチにアドバイスや課題をもらってウィークデーの練習で体に落とし込んでいくというものでした。練習方法もコーチによって様々ですが、やはり大事なのはスケーティングの基礎をしっかりと身につけることだと思います。
(1)滑る時は滑る・・・とにかく氷になれることが一番です。まずは氷にのって立つ、歩く、滑るからはじめて、次にストレートやカーブ、クロスなどを身につけてスケーティングを反復練習します。この基礎練習は面白くないかもしれませんが、毎日メニューを変えたりしてメリハリをつけてみるのもいいかもしれません。
(2)技の練習・・・基本のスケーティングができるようになったら、次はステップやスピン、ジャンプなどの技をひとつずつ習得します。この時もやはり反復練習が大事だと思います。
氷の上での練習以外にも、体力をつけたり、体幹を鍛えるサーキットトレーニングもしていました。ジャンプやスピンなど様々な技を組み合わせて氷の上で約4分間のパフォーマンスをするにはかなりの体力が必要ですから。他にも柔軟性やリズム感を鍛えるためのバレエやダンスも有効的だと思います。
最後に僕からのアドバイスは、頑張りすぎないことです。毎日100%の練習をしていると怪我のリスクも増えると思います。だから大事なのは「ぬきどころ」で、自分を追い込まないようにしていました。自分の中で気持ちにメリハリをつけて練習に納得さえしていればいいと思う。すると失敗も成長につながるのでは。失敗って「何が悪かったのか」と振り返って考える大事な成長へのプロセスだと思います。
※掲載内容は2024年8月の取材時のものです。
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