【特集】秀ノ山和弘選手からの高校生へのメッセージ | 日本の学校

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アスリートからの熱いメッセージ

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秀ノ山和弘さん プロフィール

秀ノ山 和弘さん

元大相撲力士(元大関・琴奨菊関)

PROFILE

1984年1月30日生まれ。福岡県柳川市出身。小学3年生の時に先代 佐渡ヶ嶽親方(元横綱・琴櫻関)と出会い、相撲の道を志す。中学・高校と相撲の名門明徳義塾中学校・高等学校に進学する。高校在学時には7タイトルを獲得し、2001年に佐渡ヶ嶽部屋に入門。2002年1月に初土俵を踏む。2007年3月場所で新三役(関脇)に昇進し、2011年9月場所では大関に昇進。2016年1月場所で日本出身力士としては10年ぶりとなる優勝を果たした。2020年11月場所にて現役を引退し、その後、2024年に秀ノ山部屋を創設。現在は後進の育成に励んでいる。

秀ノ山和弘さんの学生時代は・・・

周囲に支えられながら、無我夢中で相撲に取り組んだ

秀ノ山和弘さん写真
 相撲が盛んな福岡県柳川市で生まれ育った私ですが、人生で最初に始めたスポーツは柔道でした。小学3年生の時、柔道をしていて体が大きかった私は市の相撲大会に出場してみることになりました。結果、なんと優勝し、憧れの両国国技館で開催される全国大会に出場することに。全国大会の前日には相撲部屋に宿泊し、力士体験もできました。本物の力士や、国技館の土俵からの景色を見て「大きくなったら力士になりたい」という夢が芽生えました。そうして相撲一筋にしたいと家族に伝えたところ、家の横に土俵を作ってくれたのです。そこからは毎日、祖父や父、兄弟と相撲の稽古をするようになり、私の相撲人生が本格的にスタートしました。
 同じ時期に、その後の人生に大きな影響を与える出来事がありました。それが、先代 佐渡ヶ嶽親方(元横綱・琴櫻関)との出会いです。地方巡業で柳川市を訪れていた先代親方に、「大きくなったらうちの部屋に入るんだよ」とおでこに唾をつけてもらいました。当時の私はとても衝撃を受けて、相撲への志をさらに高めるきっかけとなりました。
 中学は相撲の名門で、元横綱・朝青龍関も輩出している明徳義塾中学校・高等学校に進学しました。全寮制の学校で、周囲は林に囲まれた相撲に徹するには最高の環境で、毎日必死に食らいつきながら稽古に取り組みました。親元を離れての寮生活はもちろん寂しかったのですが、それ以上に家族の期待を裏切りたくないという気持ちがありました。
 全国には強い選手がたくさんいて最初は歯が立たなかったのですが、先輩方の胸を借りて稽古を重ね、日々強くなっていく実感がありました。結果的に中学では1つ、高校では7つの大会で優勝することができました。
 相撲以外の学校生活で最も印象に残っているのは、高校3年生の時に生徒会長になったことです。校長先生が推薦してくださり、どうしても断ることができなかったのです。正直、最初は業務が大変すぎて引き受けたことを後悔したのですが、全校生徒の前で発言したり、大人数をとりまとめたり、相撲ではできない経験ができました。この経験も含めて、明徳での6年間は私を大きく成長させてくれたと思います。

壁にぶつかりながらも大関に上り詰めた現役時代

立ち合いを強みに、日本出身力士として10年ぶりの優勝へ

秀ノ山和弘さん写真
 高校卒業後は、かつての約束を守り、佐渡ヶ嶽部屋へ入門しました。憧れの部屋での毎日に期待を膨らませていたのですが、入門早々、大相撲の稽古場のとてつもない緊張感に圧倒されてしまいました。さらに私は、幼少期のスカウトがきっかけで入門という、いわゆる鳴り物入りの存在。その分、先輩や同期の力士たちが私に向ける闘争心も大きかったのです。そんな中で稽古を続け、気づけば半年間で30キロも体重が落ちていました。夜中にトイレに行きたくて目が覚めた時は、次の日の稽古が怖くてしょうがなく、心が壊れそうにもなりました。地元へ帰るわけにもいかないので、そんな夜は自分ですべてを消化するしかありませんでした。とてもつらい時期だったのですが、この時に自分と向き合い続けた経験は相撲人生で一番の財産だと思います。
 また、良きライバルにも刺激を受けました。特に、同期で入門した豊ノ島の存在は大きかったですね。高校時代は私が県大会で勝ち続けていたり、そうかと思えば出世は豊ノ島の方が早かったり……。追い付け追い越せで常にお互いを意識しながら競い合ってきました。ライバルが隣にいたことで、悔しい気持ちが原動力となり、苦しい時期を抜けられたのだと思います。
 同じ部屋には、当時大関の琴光喜関、琴欧洲関がいたのですが、お二人からも多くのことを学びました。稽古場ではいつも、彼らに勝つにはどうしたらいいんだろうと考えていました。最初は相手を研究し、相手の出方をうかがう立ち合い(取り組みが始まる瞬間のこと)を練っていたんです。でも次第に、相手の出方をうかがうとどうしても消極的な相撲になってしまうと気づきました。自分の戦い方を確立し、積極的な立ち合いをすることが大切だったのです。この学びを得てからは、立ち合いが自分の強みに変わっていきました。相撲がもっと好きになり、調子も取り戻すことができました。
 2011年には大関に昇進し、2016年には初優勝を果たしました。大関になってからは、勝ち負けだけではなく、私の相撲を目当てに来てくれるお客さんが増えました。私の取り組み次第で、お客さんが静まり返ったり、一気に沸き上がったりするんです。その分責任もありますが、土俵が、自分を最大限に表現できる場所になりました。大関になったからこそ味わえた景色だったと感じます。
 2020年に現役を引退し、2024年には秀ノ山部屋を開きました。指導者として、横綱になれる力士を育てたいと思っています。私が家族にレールを敷いてもらったように、今度は自分が弟子たちの親代わりになり、自分の息子のように愛情を注いでいきたいです。

秀ノ山和弘さんからのワンポイントアドバイス

どんな相手にも通用するように、心技体を鍛えよう

秀ノ山和弘さん写真
 ここでは、相撲の伝統的なトレーニングや、メンタル面で私が実践していたことを紹介します。

(1)四股、すり足、鉄砲……これらは相撲を取るうえで基礎となるトレーニングです。自分自身を支え、コントロールできるようになりましょう。四股、すり足、鉄砲はそれぞれ30~50回、2~3セットを目安に行ってください。楽なやり方でむやみに数を重ねるのではなく、1回の動作を集中して行いましょう。ちなみに私は、現役時代に四股を自分の心のバロメーターにしていました。四股に気力が入らないと「メンタルがちょっと落ちているな」とか、可動域が広がると「心の余裕が出たな」など、自分のメンタルを四股から分析して精神を整え、稽古場に向かっていました。

(2)ワニ歩き、手押し車……全身を鍛えるために、体を複雑に動かすトレーニングを行いましょう。例えばワニ歩きや、手押し車です。ワニ歩きはうつ伏せになり、お腹を床に近づけたまま手足を使って前進します。手押し車は二人一組で行いましょう。一人が腕立て伏せの姿勢になり、もう一人が相手の足首や脚を持ちます。回数はそれぞれ土俵1周を目安に行ってください。

(3)リミッターを外す……相撲に限らず、他のスポーツでも限界を超えたところで勝負しなくてはいけない場面があります。そのために、限界を超える練習をしたり、自分なりのリミッターを外す方法を探したりしておくと良いでしょう。秀ノ山部屋では「本気じゃんけん」を取り入れています。本気でじゃんけんして本気で喜んだり、悔しがったりしてリミッターを外す練習をしています。現役時代の私は自分自身を鼓舞するため、重低音がガンガン響くような洋楽を聞いて呼吸を整えていました。また、土俵に上がる時には大きく胸をそらす動作をルーティン化し、気持ちを高めていました。

 相撲は年齢や体の大きさなどで階級が分かれているわけではありません。そのため、自分より大きな相手や年上の相手と当たっても怪我をしないように、色々な部分をバランスよく鍛えていきましょう。それから、相撲で勝つためには、重心を低くすることが大事です。下半身でしっかり地面を踏み、上半身は力を抜いて素早く動ける状態にしておきましょう。地面にどっしりと根を張り、枝葉が揺れている木をイメージすると良いですね。

MESSAGE

秀ノ山和弘さんから
みんなへメッセージ

秀ノ山和弘さん写真

「好き」を原動力に。苦しい時こそ襟を正し自分に向き合う

 相撲に必要なのは「高い志」「一対一で絶対に負けない気持ち」「一歩踏み出す勇気」です。つまり、体の大きさや年齢は関係なく、すべては自分の心次第なのです。そのため、一番重要なことは相撲を好きになることだと弟子たちにも伝えています。
 みなさんも、まずは好きなことを見つけてみてください。好きなことだったらきっと苦しいことも乗り越えられると思います。私も大関に上がってから何回も角番を経験したり、心と体がかみ合わずに休場したりしたことがありました。それでも試行錯誤しながら苦しい時期を乗り越えて、お客さんや周りの人のためにがんばることができたのは、ひとえに相撲が好きだったからです。壁は小手先では突破できません。そういう時こそ「好き」を原動力にして自分の力をつけ、壁を突き破ってください。苦しい時こそ襟を正して、もう一度自分と向き合ってみてください。可能性は無限です。

※掲載内容は2026年5月の取材時のものです。

朝青龍 明徳さん
朝青龍 明徳さん(相撲 第68代横綱)
一生懸命努力して、できないことは何もない。

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株式会社JSコーポレーション 代表取締役社長 米田英一