【特集】山本博選手からの高校生へのメッセージ | 日本の学校

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アスリートからの熱いメッセージ

アスリートからの熱いメッセージ

山本 博さん写真

山本 博さん

アーチェリー選手 アテネ五輪銀メダリスト、ロサンゼルス五輪銅メダリスト

PROFILE

1962年10月31日生まれ。神奈川県出身。中学入学時にアーチェリーと出会い、中学生時代に史上最年少で全国大会出場。高校生時代はインターハイ3連覇の偉業を成し遂げる。1984年、日本体育大学3年生のときにロサンゼルス五輪で銅メダルを獲得。以来単一競技で合計5回五輪出場は日本人最多。2004年アテネ五輪で銀メダルを獲得。高校教師として、競技者と指導者を両立している。

山本先生の学生時代は・・・

高校入学時の目標はインターハイ3連覇

山本 博さん写真
小学生のときは野球をやっていて、中学校では野球部に入ろうと思っていたんですが、たまたま珍しいことにアーチェリー部があって、面白そうだから顔を出したんですね。そこではじめて矢を放ってみたんです。そうしたら気持ちいい。こんなに面白いスポーツがあったのかと思いました。でも、アーチェリーは的のどこに当たったかで点数が出ます。矢が刺さった的を見てみると、他のみんなより点数が低くて、クソっと思ってそのまま続けたのがきっかけです。
高校に入ったときの目標はインターハイ3連覇です。中学3年生のときに史上最年少で全日本選手権に出て、そのとき一緒に出た高校生はみんな3年生でしたから、もう高校にはいないわけです。優勝するのは私だという気持ちでいました。
でも、県大会で優勝してインターハイへの切符を手に入れてから総体が行われるまでの間に、プレッシャーから食事が喉を通らなくなって、12キロも痩せてしまったんです。公式練習には注目の新人選手ということで他県の選手たちも見学にやってきます。試合前日は睡眠も十分に取れませんでした。
それでも、もっとも自信のあった30メートルの種目の試合で面白いように的に当たって優勝することができました。試合の後は猛烈に食欲が戻ってきました。結局、目標だったインターハイ3連覇を達成することができたんですが、このころも本当にアーチェリーのことばかり考えて、練習していました。朝は7時前に学校に着いて自主練習。午前中の授業が終わるとアーチェリー場に飛んでいって練習。食堂のおばちゃんが残しておいてくれた食事を昼休みの残り10分でかきこんで教室に戻りました。食事と練習だったら練習が大事でしたね。食事はまたあとでもとれるけど、今日の課題は今日の練習で解決しておきたいからです。放課後の部活が終わってからも別のアーチェリー場へ行って9時半ごろまで練習。電車で帰ってからさらにランニングをしていました。 勉強のことを聞かれると困るんですが、ただ少しでもアーチェリーの練習をするためには、授業時間以外はアーチェリーに使いたいですから、勉強は授業中に集中してやっていたと思います。

昨日よりも今日が充実できる自分であること

山本 博さん写真
最初に出たロサンゼルス五輪はメダルを意識して失敗。銅メダルをいただきましたが、悔いの残る試合でした。
その後、ソウル五輪では8位、バルセロナは17位、アトランタでは19位とどんどん順位が下がっていきました。シドニーでは出場することすらできなくなり、しばらくは弓を持つことができなくなったほどです。私は専属コーチを持ったことがありませんし、アーチェリーをする環境も与えられたのではなくて、自分から求めていったものです。だから失敗も自分で受け止めないことには、次のステップに進めないことを知っていました。勝っても負けてもアーチェリーを続けてこられたのは、自分から求めていったからだと思います。
40代が近づき、ライバルだった選手たちも次々に引退していきましたが、私は「中年の星」になりたいと思ってアーチェリーを続けてきました。アテネ五輪では年齢が半分ほどの選手たちと闘ったわけですが、私はメダルのことは考えず、的に向かって自分のプレーをすることだけを考えていました。結果は銀メダル。ロサンゼルスから20年かけて、私はベストを尽くし、納得のいく結果を出したのです。
アテネの後よく尋ねられるのが北京五輪を目指すのかということです。意識するなと言われても見えてしまうものはしようがないんですが、何年も先のことばかり考えて、今日1日をいいかげんに過ごしてしまったらダメですね。昨日よりも今日が充実できる自分であること、その積み重ねがあってこそ北京があるのだと考えています。

山本先生からのワンポイントアドバイス

最高のプレーを繰り返すには自分との対話が必要だ

山本 博さん写真
アーチェリー自体は他の競技と違って、技術的なことは比較的短い期間で身に付けることができます。バスケットで言うとフリースローばかりやっているようなものですね。ただ、どんな状況でも最高のプレーを繰り返せるかどうかが問題なのです。
1種類しかない最高のプレーを繰り返すためには自己対話が必要です。低すぎることも、高すぎることもない自分を常に見つめ、心と身体をコントロールすれば、最短距離で成長することができます。
日々の練習では、始まってからメニューを考えるようではダメですね。朝練が終わったら午前中ずっと反省し、昼休みの練習に生かす。そこで見つけた課題を部活で解決するというように、1分1秒限られた時間をどうやって効率的に練習するかを考えることが重要だと思います。

徹底的に練習し、その日その日の課題を追究していく

山本 博さん写真
学生時代、先輩や顧問の先生にどうしたらうまくなれるか尋ねたんですが、答えは「自分で考えなさい」と言われました。だから専門書を読んだりして、自分で方法を考え、試してみたんです。そうするとバラバラに飛んでいた矢がまとまるようになっていきました。とにかく練習は徹底的にやりました。私の場合、強くなりたいという気持ちは人一倍強かったので、今日「1」できたことが明日は「1.01」でも「1.001」でも何かを学んで進歩しないと気がすまないんです。もちろん、ただ点数だけのことを考えたら毎回必ず進歩するかというと、そんなことはありません。ですから、その日その日の課題を自分なりに追求していくことが大事なんじゃないでしょうか。

山本先生からみんなへメッセージ

コツコツ仕上げていく小さな目標を見つけることで、大きな目標にたどり着ける

山本 博さん写真
学生時代、わずか1つしか歳の違わない先輩と後輩の上下関係について不満に思うことがあるかもしれませんが、社会に出たら礼節をわきまえた人間関係はとても大切です。その勉強をしているのだと思って、先輩後輩の人間関係を築いてください。もちろん自分が先輩だからと言って、後輩に対して個人の感情をぶちまけるようなことは認められません。
高校入学から最後のインターハイまでの2年余り、わずか2年と考えるのではなくて、2年は24か月だし、700日以上あるし、時間にすれば、分にすれば、すごい時間なわけです。その日その日、瞬間瞬間を大切にしてほしいですね。インターハイならインターハイ、甲子園なら甲子園という大きな目標に向かって、コツコツ仕上げていく小さな目標を見つめることで、大きな目標にたどり着けるのだと思います。

※この記事は2005年7月に取材したものです。プロフィール等は取材時点のものですので、ご了承ください。

川中 香緒里選手
川中 香緒里選手(アーチェリー選手)
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蟹江 美貴選手
蟹江 美貴選手(アーチェリー選手)
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株式会社JSコーポレーション 代表取締役社長 米田英一