PROFILE
5歳よりバドミントンを始める。青森山田高等学校へ進学し、2006年の全国高校総体では当時25年振りとなる3冠を達成。NEC入社後、シングルスからダブルスに転向し、垣岩令佳選手とのペアで2012年ロンドンオリンピックに出場し、銀メダルを獲得。日本バドミントン界初のオリンピックメダリストとなった。2014年に日本人初のヨーロッパリーグに参戦し、ドイツとイギリスで活躍。2016年には故郷・熊本を襲った震災をきっかけに国内でプロ選手として復帰し、再春館製薬所でフジカキペアを再結成。2019年2月に現役を引退。現在は、テレビ解説者や全国各地でバドミントンの普及活動を行っている。また地元・熊本県芦北町の親善大使に就任し、地元のPR活動にも尽力している。藤井瑞希さんの学生時代は・・・
仲間に恵まれた環境で、バドミントン一色の高校生活
高校は、地元の熊本を離れて青森山田高等学校に進学しました。もともと九州の高校に行く予定だったのですが、全国有数の強豪校である青森山田の監督に「練習を見に来ないか」と声をかけていただいたことが転機になりました。実際に見学させてもらうと、私の理想とするスタイルで練習が行われていて、特に練習と休憩のメリハリがはっきりしているところに魅力を感じました。「ここに行きたい!」と運命を感じましたね。また、親から自立したいとも考えていたので、親元を離れて寮生活できるところも進学の決め手になりました。
入学してからは本当にバドミントン一色の生活でした。それでも実家が恋しくなることなく楽しく過ごせたのは、同級生たちの存在が大きかったと思います。同級生は6人いて、1年生の頃から「最後の大会は6人全員で団体のメンバーに入ろう」と目標を掲げていました。皆とても仲が良かったですし、同じ目標をもつ仲間がいてくれたことで、日々の練習も頑張ることができました。そして高校3年生の全国高校総体では目標どおり、3年生全員が団体メンバーに入り、優勝することができました。さらに私はシングルスもダブルスも優勝して3冠を達成。本当にもう、最高で完璧な大会でしたね。同級生6人は今でもとても仲が良く、この仲間たちに出会えただけでも、青森山田に行って良かったと思えるほどです。仲間に恵まれた環境で競技に打ち込み、最高の成績も残すことができた、充実した3年間でした。
オリンピックで日本バドミントン界初のメダルを獲得
「今できること」を積み重ね、一歩ずつ歩んだオリンピックへの道
とはいえ、オリンピックまでの道のりは本当に大変なものでした。もともとシングルスをメインでやっていたので、ダブルスに専念するようになったことで、パートナーのことも考えなければならなかったからです。オリンピック出場というゴールに向かって、「今すべきことは何か」を逆算して、実践し続けた4年間でした。その結果、2012年のロンドンオリンピック出場権を獲得することができました。
念願のオリンピックの舞台は「ボーナスタイム」のような感覚でした。勝敗よりもここまで頑張ってきた自分たちを褒めながら、やれるだけのことをやってみようと、そんな気持ちでしたね。変に気負いすぎずにプレーできたこともあり、結果は銀メダル。日本バドミントン界初のメダルとなりましたが、私としては「ラッキー」という感じでした。私たちが歴史を作ったのではなく、これまで頑張ってこられた先輩方がいたからこそ獲得できたメダルでもあると思っているからです。特に北京オリンピックで女子ダブルスの先輩たちが4位となり、「この先輩たちに勝てたらメダルに近づける」と明確な目標を持ちながら練習できたことは大きかったと思います。
オリンピック後は、ヨーロッパリーグにチャレンジしました。高校生の時から海外で生活してみたいと考えていたことや環境を変えたいと思ったことがきっかけです。ドイツとイギリスでプレーをして、気持ち的にもリフレッシュすることができました。このまま引退しようかとも考えていたのですが、2016年に地元の熊本で震災があり、再び国内に戻ってプレーすることを決めました。熊本の方々には本当にお世話になっていたので、バドミントンを通して自分がやれることを精一杯やろうと思ったんです。またオリンピックが終わった直後は自分のことで頭がいっぱいでしたが、少し落ち着くと「後輩に対してもっとできることがあったのでは」と考えるようになりました。そのため国内で復帰した2年間は、できる範囲で後輩の育成にも取り組みました。2018年の引退試合はやっぱり印象に残っています。友人やお世話になった人たちが試合を見に来てくれて、とても幸せな時間でしたね。本当に悔いなく、大満足な気持ちで競技生活を終えることができました。
藤井瑞希さんからのワンポイントアドバイス
いつでも自信を持ってコートに立てるよう練習をすることが大切
(1)動画でイメージトレーニングをする……憧れている選手や好きな選手のプレー動画を見ることは大切な練習の一つだと思います。バドミントンは、イメージをもつことがとても大事な競技。「この体勢で打ってきたらシャトルはここに来る」という形が決まっているので、映像を見てそれを理解し、動きがイメージできるようになれば、自身のプレーにも落とし込めるようになるはずです。また、フットワークを学びたいのであれば選手の足元、打ち分け方を学びたいのであればラケットワークなど、強化したいところに注目するのも良いと思います。毎日10分でも良いので、日課の一つとして取り入れてみてください。
(2)自信を持ってコートに立つ準備をする……試合当日にコートに立った時に自信が持てない状況では負けてしまってもおかしくありません。自信がある状態で試合に臨むためには日頃から「明日が試合でも大丈夫」と思えるまで練習するしかないと思います。ただ練習量をこなせばいいというわけではなく、ミスの原因や成功した理由をわからないままにせず、常に考えながら練習することが大切です。それでも本番で緊張してしまう場合は、試合前のルーティンを作っておくのも良いと思います。私は試合で緊張したときに、トイレにある鏡などで自分自身と目を合わせて、笑顔で「大丈夫」と言うようにしていました。方法は人それぞれですが、自分なりのルーティンを探して実践してみてください。
また、ダブルスの選手にとってはパートナーとのコミュニケーションも大切です。特に私が心掛けていたのは、相手と会話することと自分の意見や考えをしっかり話すことでした。パートナーなら自分が考えていることを悟ってほしいと思うこともあるかもしれませんが、どんな相手でもやっぱり言葉にしないと伝わりません。また「相手はこう思っているだろうな」という思い込みにも注意です。私自身、試合結果が良くなくて話しづらいときでもその日のうちに会話をするようにしたり、相手が話したくなさそうな時でもまずはその理由を聞いてみたりすることを心掛けていました。スポーツや勝負の世界で「勝つこと」を目標に一緒にやっている以上、パートナーとのコミュニケーションは大事にしてほしいです。
※掲載内容は2024年9月の取材時のものです。
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