PROFILE
1977年8月20日生まれ、大阪府出身。身長172cm、体重66kg。7歳から体操を始め、全国中学生大会で個人総合優勝。清風高校時代にはインターハイ個人総合で2位。順天堂大学に進学し、1997年の全日本学生選手権個人総合2位、1998年のNHK杯で個人総合優勝。1999年の全日本学生選手権では個人総合優勝、全日本選手権の鉄棒で優勝する。アテネオリンピックでは日本男子体操のキャプテンとしてチームを牽引し、団体で28年ぶりとなる金メダルを獲得する。種目別の鉄棒でもみごと銅メダルを獲得。アテネオリンピック後は度重なるケガと手術に苦しみながら、それを乗り越え、2008年NHK杯の演技では観るものに感動を与えた。2009年4月からトップメンタルトレーニングをスタート。2012年の米田功体操クラブ設立に向けて活動を続けている。http://www.yonedaisao.com/
米田 功さんの学生時代は・・・
いつも自分より年上の先輩たちと一緒に戦っていた
よく家のベッドで飛び跳ねていた記憶があります。水泳のときはよく泣いていた記憶がありますが、体操ではなかったので、やはり楽しかったんだと思います。
最初は家の近くのクラブに通っていたのですが、試合に出るようになると、やはり強くなりたいと思うようになりました。そこで試合で上位を独占している、池谷幸雄さんや西川大輔さんも卒業されたマック体操クラブに移りました。それから中学卒業まではマックを拠点に続けて、清風高校に進学しました。
毎日練習に明け暮れましたね。放課後の練習は毎日で、休みはまったくなかったです。当時はコーチが厳しくて、練習に行くしかなかったという感じもあったのですが、いろんな合宿に連れて行ってもらったり、試合で勝ったり、練習の中でいろんなゲームをしたりと、楽しいことがいっぱいありましたね。だから、やめたいと思ったことはありません。
小学生の5、6年生くらいから少しずつ全国の大会に出るようになって、徐々に名前も広まってきました。でも、特に自分だけできるという感覚はありませんでした。体も小さかったし、いつも自分より年上の先輩たちと一緒の班で戦っているという環境が良かったんだと思います。
シドニーオリンピックの落選が大きな転機に
一生懸命頑張っていると、周りも手を差し伸べてくれる
ところがシドニーの選考の半年前くらいに「オリンピックに出たいな」と思い始めたらプレッシャーを感じたり、このままで行けるのかと焦りを感じたりして。練習で無理をしてケガをしたり、調整が上手くできなくて落選してしまいました。
そこで初めて、「オリンピックってすごいんだ、絶対行きたい!」と意識しました。代表選考で落ちたときは期待してくれていた家族の顔を見られなかったし、自分は体操に対して不真面目だったと気づいた時でもありました。シドニーに行けなかった分、アテネでは絶対にメダルを取りたかったし、悔しさを倍にして返さないと自分では納得できなかったんです。
そこから4年間はもうオリンピックに向けて一直線。そして体操が、ますます楽しくなってきたんです。課題もいろいろ出てきて、ひとつひとつをクリアするためには苦しさもあるけれど、達成感も出てくるんです。それで、なりふり構わず熱中していくと、それを周りも見てくれています。
一生懸命に頑張っていると、アドバイスをしてくれる人や、支えたり手を差し伸べてくれる人もたくさんいて、「なんとかそれに応えたい」と更に頑張れるんです。やはり期待されることはすごくうれしいし、周りの人たちってとても大事だなと思うようになりました。
米田 功さんからのワンポイントアドバイス
基本が完璧にできることに、楽しみを見出してほしい
基本的に、どう強くなりたいか、種目でも何が強くなりたいのかが大事で、それによってメニューは違ってくると思うんです。メニューから自分を作るのではなくて、自分がなりたい自分に対してメニューができてくるのだと思います。
そのためには、まずやりたいことを決めてから、何がいいかを人に聞くこと。情報を集めて、自分で判断する。自分がなりたい自分をイメージするには、最初はなりたいと思う人の真似をすることが近道ですね。
具体的なメニューは人それぞれだと思いますが、僕がワンポイントおすすめするとしたら、
(1)今できることをもっと磨いていく・・・自分ができていることが、果たして本当にできているのか。自分がやっていることを見つめ直して、完成形をイメージすることが大切です。
(2)例えば鏡で自分の倒立を見て、どれがまっすぐか確認してみる・・・倒立がまっすぐできない人もいると思いますが、そこから始まります。さらに、じゃあつま先をぐっと伸ばして、どう伸ばすのがきれいか。かっこいいか。そこまでこだわりだすと面白くなってくるんです。
強くなりたいというときに、何かもっと先に先にと進みたくなるかもしれませんが、今できていることをしっかりと形にしていく、それがよく言われている「基本」だと思います。
技を磨くのも楽しいですが、基本が完璧にできるところに楽しさを見つけていくことが体操だと思います。しんぴ倒立という基本がありますが、それもどうやったらきれいに楽に上げられるか。例えば、体操の中で力を使う動作を、どうやって自分の中で効率よく、きれいに仕上げていけるかというのが大切なんです。
※この記事は2009年5月に取材したものです。プロフィール等は取材時点のものですので、ご了承ください。
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