塚原 直也選手
体操選手 アテネオリンピック金メダリスト 朝日生命所属
塚原 直也選手
体操選手 アテネオリンピック金メダリスト 朝日生命所属PROFILE
1977年6月25日生まれ。東京都出身。オリンピック金メダリストの父と、同じくオリンピック日本代表の母という体操一家に育ち、10歳から本格的に体操を始める。明治大学付属中野中学・高校と進み、体操部に籍を置くかたわら、父母がコーチを勤める「朝日生命体操クラブ」で練習に励む。明治大学卒業後は朝日生命に所属し、97年には世界選手権で個人総合銅メダル、99年は銀メダルを獲得。そして、96年からはアトランタ、シドニー、アテネと3連続でオリンピック出場を果たし、04年のアテネオリンピックでは団体で見事金メダルに輝いた。塚原 直也選手の学生時代・・・
遊び場だった体育館から、夢がスタートした
本格的に体操を始めたのは、10歳からですね。当時、中国の元代表選手の方が指導したいと体育館を訪ねてこられて、本格的な指導を初めて受けたんです。体操を本格的にやろうと思ったのは、父の影響が大きかったと思います。父がオリンピックの金メダリストということはわかっていましたから、「僕もオリンピックで金メダルをとって世界一になりたい!」と思ったのがきっかけで、遊び場だった体育館から、オリンピックへの夢がスタートしたんです。
父や母が側にいるという環境の中でも、楽しんで体操ができたのは、家庭でも、体育館でも、親子というより友だちという感覚だったから。特に厳しいことを言われることもなかったし、スパルタなんていう感じではなかったですね(笑)。父の教え方は、「基本や必要なことをきっちりとマスターしていれば、後は楽しんで体操をする」みたいなスタイルだったと思います。そのおかげで、僕も自由にやらせてもらったし、夢に向かって頑張ってこられたんじゃないかな。
中学、高校時代、ほとんどの練習はクラブでやってましたね。毎日、学校が終わったら4時ぐらいから8~9時までクラブで練習してたので、学校の友達と遊びに行くこともほとんどなくて、体操一筋の学生時代だったかもしれませんね(笑)。特に高校時代は、教えていただいていた中国人の先生が帰国されて、クラブでも一人で練習していることが多かったんですよ。一人っきりだから、何をやったらいいのかわからなかったけど、ただ、黙々と練習していました。時には一人なので飽きてしまうんでしょうか、体操にも気がなかなか行かなくて。「じゃあ、体操以外に何をしよう」と考えても思いつかないんですよ。それで「とりあえず勉強しよう」って感じで勉強したなぁ~。今から思えば、人生の中で一番勉強した時期だったんじゃないかな(笑)。友だちといえば、体操仲間か勉強仲間でしょ、だから一緒に遊ぶっていう雰囲気ではないんですよ。それだけに、高校時代は遊びたい願望も一番強かったと思います。
3度目の挑戦で、金メダルの重さを実感した
僕の場合は、ほとんどの人と違って、オリンピックに関わりの深い家庭で育ってきたし、いつも身近というか「進むべき道」みたいに感じていましたね。それだけに、アテネでの金メダルは嬉しかったですけど、遠い道のりでもありました。それだけに、ずっと夢だった金メダルに、いざ手の届くところまでくると何だか怖くなってくるんですよ。「このまま金メダルを手にしていいのか?」と考えてしまって、優勝が決まったときも本当はあまり現実っぽくなかったですね。でも、表彰台で金メダルをかけられたとき、その重さと共に世界一を実感することができました。次は、4年後の北京で個人として金メダルを獲得して、あの最高の気分をもう一度、実感したいですね。
塚原 直也選手からのワンポイントアドバイス
全身の筋肉をバランスよく鍛えることが大切
(1) 準備運動・・・ストレッチなどで身体をあたためて、全身の筋肉をほぐしておくこと。練習でスムーズな動きができるためでもあり、ケガの防止にもつながるので重要です。
(2) 器具を使っての練習・・・僕は6種目の器具を使って均等に練習するようにしています。体操に必要な各部分の筋肉を均等に鍛えるためにも、バランスのよい練習メニューを心がけてください。特に、体操は個人競技で6種目で競います。苦手種目を作らないことも大切です。
(3) ウエイトトレーニング・・・僕たちのウエイトトレーニングは、特に器具や重りは使いません。6種目の器具を使った練習で全身の筋肉を充分に使っているので、腕立てふせや腹筋といった内容が中心ですね。無理な筋肉の強化は、逆効果になることもあるので。ただ、中学、高校の時期はまだ基本的な筋肉が作られていないことが多いので、筋肉を作るためにも本格的なウエイトトレーニングは大切だと思います。
また、食事では基本的なことですが、筋肉、皮膚、血液、骨など体を作るうえでも大切なたんぱく質を基本に、栄養バランスよく食べるようにしています。
そして、もう一つ大切なことはイメージを高めること。特に演技中は、練習でうまくいったことを思い描き、よいイメージを高めることが大切だと思います。
※この記事は2004年12月に取材したものです。プロフィール等は取材時点のものですので、ご了承ください。
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