【特集】小原日登美選手からの高校生へのメッセージ | 日本の学校

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アスリートからの熱いメッセージ

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小原 日登美選手 プロフィール

小原 日登美選手

女子レスリング選手 陸上自衛隊・自衛隊体育学校所属
2012年ロンドンオリンピック・女子レスリング48kg級金メダリスト

PROFILE

1981年1月4日生まれ。青森県八戸市出身。小学生の頃から青森の八戸キッズ・レスリング教室に通い始める。高校時代は全国高校生選手権50kg級で優勝。1999年に中京女子大学(現・至学館大学)に進んでからも全日本女子学生選手権、全日本選手権で優勝し実力を発揮していった。そして翌年2000年にはアジア選手権、世界選手権でも優勝を飾り、2001年には世界選手権で連覇を果たした。その後も国内外の大会で優勝を納めるが、ひざの手術や階級の変更など様々な問題がありアテネ、北京オリンピックの出場は逃してしまう。2008年には世界選手権の優勝を最後に一度は引退をするものの、2010年に結婚後、現役復帰を発表。2011年には世界選手権で8度目の優勝、そして全日本選手権優勝でロンドンオリンピック日本代表に決定。2012年ロンドンオリンピック・女子レスリング48kg級で悲願の金メダルを獲得した。

小原 日登美選手の学生時代は・・・

中京大・栄監督の言葉で、世界を目指したいと思った

小原 日登美選手写真
 私の家族はみんなスポーツ好きで、小さい頃から夏は家族で海水浴やプール、冬はスケートと、体を動かすことが我が家のコミュニケーションみたいなところがありました。初めてレスリングに出会ったのは小学校3年生の時です。弟が通っていたレスリング教室について行ったんですが、学校の体育授業のようで何となく面白そうに思えて始めることに。小学生の頃はレスリング教室というより楽しく体力作りといった雰囲気で、みんなとキャンプに行ったりすることがすごく楽しかったり、また試合には家族全員で行くので、レスリングが家族のコミュニケーションになっていきました。
 中学まではレスリング教室で週1回の練習でしたが、八戸工業大学第一高校に進んでからはレスリング漬けの毎日で、いたってまじめな高校生だったと思います(笑)。もともと青森県には女子のレスリングをやっている高校はひとつも無く、高校では私が入るからとレスリング部を作ってもらいました。でも部員は少なく練習は男子に混じってやっていましたね。でも男子と一緒に練習できたことが後にはプラスになっていったんだと思います。男子には体力的には勝てませんが、そこに追いつこうと頑張っているうちに体力もついていたんでしょうね。高校時代に成績を残せたことも、そんな練習の成果だと思っています。
 そして高校時代に私の最初のターニングポイントがありました。高校2年生の時、愛知県の中京女子大学で行われた高校生女子選手権でした。優勝はできなかったのですが、その時に中京女子大学レスリング部の栄和人監督から「うちに来ないか、必ず世界チャンピオンにする!」と声をかけていただいたんです。当時は将来のこともはっきりとは決めていませんでしたが、八戸キッズで指導していただいていた先生が日体大出身ということもあって、私も日体大に進んで卒業後は体育の先生になろうという目標もありました。でも栄監督の言葉に心を動かされたというか、中京大で強くなって世界を目指したいと強く思うようになりました。そして1999年に、初めて親元を離れて名古屋へ来ました。もし中京大に来ていなかったら世界チャンピオンにはなれなかったと思います。

中京大学から自衛隊へ、そして悲願のオリンピックへ

世界選手権連覇で臨んだオリンピック、そこには大きな壁が

小原 日登美選手写真
 栄監督のレスリングに対する情熱は、選手の私たちにもひしひしと伝わってきました。それだけに、この人について行けば大丈夫、必ず世界でチャンピオンになれるという絶対的な信頼があり、練習に没頭できたことで確実に上達を感じていました。
 そして世界チャンピオンも夢じゃないと意識できたのが大学1年の時。全日本選手権の決勝で、同じ青森出身で少女時代から何度も対戦するも一度も勝てなかった伊調千春選手に勝って全日本チャンピオンになれたことでした。私にとって大きな自信にもなったし、この喜びは、翌年の世界選手権初優勝よりも大きかったですね。
 世界選手権で優勝できたことで次の目標がはっきりと見えてきました。オリンピックです。2004年のアテネ大会から女子レスリングが正式種目になると決まったことも、モチベーションを上げることになりました。ただ、オリンピックまでには超えなければいけない壁がたくさんありました。ひとつは私がこれまで戦ってきた51kg級の階級が実施されないと決まり、48kg級に落とすか55kg級に上げるしかない、ということです。そしてもう一つ大きな壁はその頃不調を感じていた右膝の手術でした。世界選手権で2連覇していたので、手術を受けてもアテネまでには元の状態に復活できる自信がありましたから。でも、手術後に55kg級に変えて復帰した試合で吉田沙保里選手にあっさりと負けてしまったんです。手術とリハビリで約1年間離れたことで、もう吉田選手には勝てないと痛感してしまい、アテネと続く北京オリンピックの出場も逃してしまいました。このことが一度は引退を決めた大きな要因です。
 卒業後は自衛隊でレスリングに専念していましたが、引退後は一度八戸に帰りレスリングから離れた時期もありました。でもその時に改めてレスリングへの思い、レスリングができる喜びを思い出したんです。そして妹の引退を機に現役に復帰しロンドンを目指そうと決めました。決めてからは自衛隊体育学校はもちろん、夫の強いサポートもあり全日本選手権、世界選手権での優勝と確実に積み上げて、ついにロンドンオリンピックのマットで悲願の金メダルをつかみ取ることができました。優勝の瞬間に感じたことは、優勝の嬉しさと自分の夢を達成できた喜び、そして「やっと終わった」という安堵感でした。私のレスリング選手としての集大成が完結した思いでした。

小原 日登美選手からのワンポイントアドバイス

強くなるには、向上心と絶え間ない努力

小原 日登美選手写真
 私は高校時代、女子レスリング部は少なかったのでいつも男子を相手に練習していました。体力の違いはありますが、男子に挑戦する、努力して強くなるという気持ちはいつも持っていました。練習で大切なことは、やらされるのではなく自分からやるという気持ちだと思います。強い向上心と絶え間ない努力、これが本当に強くなる要素ではないでしょうか。そんな思いを持った上で、練習をしてほしいですね。私からの練習のアドバイスは・・・
1 走る・・・基礎体力を身につけるには一番有効的な練習メニューです。高校時代は毎日3~5キロは走っていました。特にタックルの力を付けるためには、腰に付加をかけて走ったり、砂浜を走ったりもしました。基本の体力がなければ技を身につけて強くなることはできません。
2 ウエイトトレーニング・・・私の場合は高校までは懸垂とか腕立て伏せなど、自分の体重でできるものしかしませんでした。大学から本格的に自分の体重プラスの付加を付けて筋肉を鍛えるようにしていました。
3 相撲の練習・・・実は相撲にはレスリングに通じるものがたくさんあるのです。四股を踏んだりすり足の動きもレスリングに大いに生かされますし、あたり稽古はタックルの練習に有効的です。レスリングに大事な下半身を鍛えるには相撲の練習メニューを応用してみてください。
最後にもう一つ大事なことは、解らないことや疑問に思ったことは理解するまで諦めないこと。コーチに聞いたりしながら考えて何度も練習を繰り返し、そして自分のものにしていくことです。課題を作り、考え、追求していくことが、強さにつながります。

小原 日登美選手からみんなへメッセージ

喜びも挫折も、経験が自分を大きく強くしてくれた

小原 日登美選手写真
 青森にはレスリングの伊調姉妹、坂本姉妹と言われてきました。でも伊調姉妹はオリンピックで活躍し、私たち姉妹はオリンピック出場もできなかったという思いもありました。悔しさや焦りもあったし、一度は諦めたことも。そんないろんな経験や思いを背負って臨んだロンドンオリンピックでした。そしてどんな結果に終わろうとも、このオリンピックを最後に選手は引退すると決めてもいました。それだけに金メダルの喜びも大きかったし、今まで応援してくれた監督や家族、友人たち全ての人たちへのありがとうの気持ちがあふれてきました。今後は、私の経験をいろんな人に伝えていきたいと考えています。喜びも挫折も、経験が自分を大きく強くしてくれたことを伝えていくのが私の役目だと思います。
 高校時代は体や考え方も少しずつ大人になっていく時です。そんな時期だからこそ、自分の好きなものを見つけてほしいですね。失敗したってかまわないし、時間がかかってもいい。ただそこに近づこうと一生懸命に努力していけば、次のステップにつながりやがて結果が出るはずです。そして必ず応援してくれる人も現れる。私はそう信じています。

※プロフィール等は2013年6月時点のものです。

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株式会社JSコーポレーション 代表取締役社長 米田英一