PROFILE
1997年8月27日生まれ。石川県河北郡津幡町出身。元レスリング選手の両親のもとに生まれ、小学2年生の時に母がコーチを務めるクラブに通い始める。中学3年時にはジュニアクイーンズカップ中学生の部48kg級で優勝。高校は名門至学館高校へ進学した。高校3年時の全日本選手権決勝では、姉の梨紗子と初めて直接対決し、惜しくも準優勝に終わった。大学は至学館大学へ進学。2019年の世界選手権では3位に入賞し、東京オリンピックへの切符を勝ち取った。東京オリンピックでは62kg級で優勝。57kg級で優勝した姉とともに、姉妹での金メダル獲得を成し遂げた。恒村友香子選手の学生時代は・・・
運動が苦手だけど負けず嫌い。高校からはだんだんと本気に

小学生と中学生の時は、ときどきやめたいと思いながらもなんとなく続けていました。大会で入賞できることもありましたが、運動を好きになりきれなかったんです。結局「やめる」と言い出すことができず、高校も姉と同じ、レスリングの名門である至学館高校に進学することに。しかし高校に入ると、レスリングに対する気持ちが変化しました。高校の先輩はみんなとても実力があり、私はまったく勝てませんでした。そんな環境に身を置く中で、だんだんと悔しい気持ちが芽生えてきたんです。負けず嫌いという意味では、スポーツに向いている性格だったのかもしれません。高校からは、本気で勝ちたいと思うようになり、レスリング一筋で頑張っていこうと決心しました。
当然、練習にもストイックに臨むようになっていきました。特に、試合で同じ選手に何度も負けたり、あと一歩のところで惜しくも負けたりしてしまうと本当に悔しくて、誰よりも練習しようと思うようになりました。全体練習後に1時間残って自主練するなど、毎日ひたすらレスリングに向き合っていましたね。
高校時代に最も印象に残っているのは、3年生の時に出場した全日本選手権の決勝戦です。それまで全日本選手権ではなかなか決勝まで進めずにいたので、ようやく決勝の舞台に立つことができてとても嬉しかったです。さらに、決勝の相手は姉の梨紗子。公式戦で対戦するのはこの時が初めてでした。結果的には負けてしまい、悔しい気持ちもありましたが、目標としていた全日本の決勝で姉と試合できたことは、今でも強く思い出に残っています。
姉妹金メダルを目指した東京オリンピック
周りの応援に応えたい一心で、負け越していた相手に決勝で勝利

さらに、リオデジャネイロオリンピック終了後、姉はいろいろなメディアで「次の東京オリンピックは妹と一緒に出ます」と言うんです!最初は「そんなつもりじゃないのに」と思っていたのですが、言われ続けるうちに、だんだんとオリンピックを意識するようになっていきました。そして、大学3年生の時、初めて世界選手権でメダルに届いたことが自信となり、明確に東京オリンピックを目指すようになりました。
東京オリンピック出場をかけた大会は印象に残っています。敗者復活戦を勝ち抜き、3位決定戦で勝てばオリンピック内定、負ければ出場叶わずという崖っぷちの状況の中、家族やコーチに励まされて勝利をつかみました。その瞬間は、本当にオリンピック選手になれたことが信じられず、夢なんじゃないかと思いました。
そして迎えた東京オリンピック。私は初戦からゾーンに入っていて、自分でも驚くほどの集中力で試合に臨んでいました。練習を積み重ねてきて、技術、体力、メンタルがピークの状態をつくれていたんです。緊張やプレッシャーもなく、ただただ目の前の試合を楽しんでいたことを覚えています。それでも、決勝はさすがに緊張感がありました。試合相手は、過去の戦績では負け越していた選手。ハーフタイムには疲れを感じて、一瞬ネガティブな気持ちがよぎりました。しかし最後の最後は、「これまで応援してくれた家族やコーチに応えたい」という気持ちを原動力に、戦いきりました。金メダルが決まった瞬間は言葉にならないくらい嬉しかったですね。そして、翌日には姉も優勝。姉妹でオリンピック金メダルという悲願を達成できました。それまで、姉と一緒に待ち受け画面を金メダルにしてモチベーションを上げていたので、やっと本物を手にすることができたと喜びを分かち合いましたね。
現在は、2025年の出産から復帰してレスリングを続けています。出産を機に引退を考えたこともありましたが、東京オリンピック後、怪我もあってなかなか勝てずにいたのが心残りだったんです。復帰してすぐは、出産前までできていたことができなくなっていて落ち込むこともありました。しかし、今どん底にいるということはあとは上がるだけだと考えて、日本一になることを目標に、一から頑張っています。
恒村友香子選手からのワンポイントアドバイス
トレーニングは地味なものこそ大切!継続は気持ちの強化にもなる

(1)プランク……体幹を鍛えるプランクは、学生時代から必ず練習に取り入れていました。体一つで相手とぶつかるレスリングにおいて、体幹の強さは重要です。実際に、出産後復帰してすぐの体幹が弱くなっていた時期は、簡単に押し負けてしまうことが多くありました。プランクには様々なやり方がありますが、私のおすすめは、プランクの姿勢を1分キープしたら休憩して、次は2分キープ、さらに3分キープ…と、だんだん時間を増やしていくメニュー。他にも、30秒キープしたら片手を上げてキープ、さらに30秒後には手とは逆の足を上げてキープ、というように、徐々にバランスをとりにくくするメニューもやっていました。意識していたのは、同じプランクでも日ごとにやり方を変えること。飽きることも慣れることもなく、毎日「きつい」と思いながら続けられます。
(2)懸垂……筋力トレーニングとしては、懸垂がおすすめです。筋力を鍛えるのはもちろんですが、私は気持ちも鍛えられると思っています。レスリングは、最後の1秒まで勝敗がわからない競技です。諦めず、気持ちで限界を超えることで逆転できることもあります。懸垂は、限界だと思ってからプラス3回、それができたらさらにもう1回、というように、気持ちで限界を超える練習にもなります。
(3)思ったことをノートに書く……私は、東京オリンピックの時にメンタルトレーニングをしてもらいました。その内容は、相手の人に素直な感情を全部話すだけ。言葉にすることで気持ちが整理されて、落ち着くことができました。その経験をもとに、今は思ったことをノートに書くようにしています。練習でうまくいかなかったことや抱えているモヤモヤを言語化することで、今の自分に足りていないものや、次に何をすればいいかが見えてくるんです。また、ノートを見返して過去の悩みを忘れないことも大切です。調子の良い時こそ初心を忘れず、気持ちを奮い立たせましょう。
私は、トレーニングは基礎を鍛える地味なものが一番重要だと思っています。飽きない工夫やメンタルを保つ努力をしながら、体と気持ちの両方を鍛えていきましょう。
※掲載内容は2026年3月の取材時のものです。
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