【特集】伊調馨選手からの高校生へのメッセージ | 日本の学校

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アスリートからの熱いメッセージ

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伊調 馨選手

伊調 馨選手

女子レスリング選手
アテネ・北京オリンピック金メダリスト

PROFILE

1984年6月13日生まれ。青森県出身。兄と姉(伊調千春さん)の影響で3歳からレスリングを始め、1996年全国少年選手権や1998年全国女子中学生選手権などで優勝を重ねる。高校からは愛知県の中京女子大学附属高校(現;至学館高校)に進み、その後、レスリングの強豪校である中京女子大学(現;至学館大学)へ。その間、ジャパンクイーンズカップ2001の56kg級、ジャパンクイーンズ2002では63kg級で続けて優勝し脚光を浴びる。2002年に日本代表に選出され同年のワールドカップ、全日本選手権など数々の大会で優勝。その後も世界選手権、全日本選手権では連覇を続ける。そして2004年のアテネオリンピック、2008年の北京オリンピックでは金メダルを獲得。来年2012年のロンドンオリンピックでは3連覇を狙う。

伊調 馨選手の学生時代は・・・

同じ道を行く姉こそが、一番の理解者であり心の支えだった

伊調 馨選手写真
私は3歳の頃から、兄や姉の千春と一緒に週に2日のレスリングクラブに通い始めました。はじめの頃は体力トレーニングがメインで、レスリングの練習はほんの少しでした。でも、そのレスリングが楽しみだったんです。小学生になっても姉にはまだかなわなくて、いつもやられていました(笑)。中学生の姉の練習相手にもなれなくて悔しかったのを憶えています。「いつかは姉にも勝ちたい!」という思いがあり、いつも姉の背中を追いかけていたのかもしれないですね。小学校、中学校時代と大会で優勝できたのも、姉という良きライバルであり先輩がいたからこそ目標が持てたのだと思います。高校は愛知県の中京女子大学附属高校(現;至学館高校)へ進みましたが、すでに姉が京都の高校へ進学していたので、私も県外に進学するのが当然のように思っていたんです。姉が敷いてくれたレールのようなものがあったので、両親も私が家を出て県外の高校に通うことを納得しやすかったんだと思います。
 でも高校に入って3日目には泣きました(笑)。毎日がレスリング漬けで練習も辛かったですから。でも家を出てしまったので帰るに帰れないし、ここでやっていくしか無いんだって思いました。高校の寮生活では掃除やら洗濯なども、自分が一番下だった頃は全部やらなければいけませんでした。練習も中学時代は週に2日だったのが毎日になったし、それはキツかったです。でも、高校から家を出たおかげで精神的にも鍛えられたし、寮生活もいい経験だったと今は思います。当時はまだ携帯電話を持っていなかったので、よく姉と文通していました。毎日の生活を姉に話すことによって、また姉から返事が来る。そんな繋がりが当時の自分の支えになっていました。姉は私にとって子どもの頃からの目標であり、一番の理解者でもあります。だから、そんな姉の存在があったことで、辛くても頑張れたんだと思います。

そして20歳、初のオリンピック、アテネへの挑戦

いま、自分にできる一番のレスリングをやるしかない!

伊調 馨選手写真
 高校・大学時代と通してレスリングに対する思いは、やはり「勝つこと」が一番でした。全国大会を勝ち進み、初の国際大会に出場したのもこの頃です。もちろん世界の強さに圧倒され悔しい思いもしましたが、その悔しさがバネにもなりました。そのうえ日本の女子レスリングは強かったので、この人たちに近づけたら世界は見えてくるという、自分なりの方程式がありました。だから、ひたすら練習して強くなることを目標としていたんです。その結果が20歳のアテネオリンピック出場だったと思います。ただ私にとってはオリンピックだからという特別な意識はなかったですね。まだ何もわからない子どもみたいなものだったし(笑)、ドキドキしてただ嬉しかった。プレッシャーも無く「自分にできる一番のレスリングをやればいい」と思っていましたから。そして念願の金メダル。姉と二人で金メダルはかなわなかったけど「この金メダルは二人で取ったメダルだ」と実感していました。
 その後の北京オリンピックまでの4年間は私たち姉妹にとっては濃い4年間でした。北京のための4年間だったといっても過言ではないと思います。やはり勝つことへのこだわりというか、執念のようなものがありました。それに日本女子レスリング界のためにも負けられないという思いもありました。アテネでは無かった責任というものを感じていました。そして北京オリンピックでの連覇を達成し、自分の中でも大きな達成感がありました。ただ、終わってみると次の目標がすぐに見つからなかったんです。だから2年間休んでカナダへ留学しました。今まで勝つことばかり考えて、前しか見えていなかった私が、初めてカナダという大自然の中でリラックスしてレスリングをすることができました。環境をはじめ練習など全てが新鮮で、初めて違う方向からレスリングを見られた思いがしました。
 この2年間は自分にとっては大きかったです。帰国して今は男子のコーチに習っています。技、体力ともに強化することも大きな目的ですが、今までの負けない守りのレスリングから、攻めのレスリングを目指しています。女子では補えないような技や体力においても、細かく深いことを教わり「自分はなんて知らなかったんだろう」と痛感する毎日です。北京の後、忘れかけていた「勝ちたい」という気持ちも改めて強くなってきました。北京までは勝つことが一番でしたが、今は自分自身のレスリングを追求したいと考えています。

伊調 馨選手からのワンポイントアドバイス

一番大事な体力、そして技を身につける

伊調 馨選手写真
 私が高校生の頃は、レスリングの練習に明け暮れる毎日でした。進学したのがレスリングの強豪校だったので、練習はかなりハードでした。ちなみにその練習内容は、朝はランニングとウエイトトレーニングを1時間、夕方はマットの上でレスリング、スパークリング練習を3時間。休みは週に1日だけ。そんな練習をしてきた私がみなさんにアドバイスできることは以下の点です。
(1) 体力の強化・・・高校時代は体力も伸びる時期だと思います。レスリングにはやはり体力が重要です。走ること、けん垂などのウエイトトレーニングを体力アップにつなげるつもりで頑張ってください。
(2) 技を身につける・・・技を身につけるにはマットの上で実際に相手と組み合ってのレスリングや、スパークリングの練習も大事だと思います。できるだけ試合に近い練習をするように心がけてみることです。
(3) 構えの姿勢・・・レスリングは構えが大事なので下半身やお尻などの強化も大事です。

 練習内容は指導者によってもそれぞれでしょうが、基本は体力と技を身につけることだと思います。そして私が一番大事だと思うのは、諦めないことです。技でも、自分にできないことがあればできるまでやる。自分の弱い部分を強化することも大事なことです。いろんな人といろんな練習をして、体力であれ技であれ、自分の武器となるものを見つけてください。練習に何一つ無駄なものはありません。

伊調 馨選手からみんなへメッセージ

好きなら、何があっても諦めない!

伊調 馨選手写真
 私には好きなレスリングがあり、どんどん勝てるようになっていくことが嬉しかった。でも高校時代は毎日がレスリングになり、辛いこともあったし悔しい思いもたくさんしました。好きだけでは続けられないものがあることを知りました。でも楽しいことや辛いこと、悔しい思い全てが私の原動力になったことも事実です。今も次のロンドンオリンピックを目指して、毎日キツい練習をしています。練習を通して感じることは、自分にはまだレスリングの伸びしろがあるということ。最近やっとできるようになった技もあり、どんどん可能性が広がるのを感じています。
 みなさんの可能性も、これからどんどん広がっていくと思います。だから何事も諦めないでください。できなければ、できるまで頑張る。これが自分に勝つ秘訣ではないでしょうか。
 今の私の目標は、ロンドンで「そのとき自分にできる一番のレスリング」をしたい。少しでも自分が求めるレスリングがしたいですね。アテネや北京の時とはまた違う伊調馨のレスリングをみなさんに見てもらいたいです。ロンドンでは、今より強くなっている自信があります。みなさんも、どうぞ応援してください。

※プロフィール等は2011年11月時点のものです。

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樋口 黎選手(レスリング選手)
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小原 日登美選手(レスリング選手)
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株式会社JSコーポレーション 代表取締役社長 米田英一