荒井 広宙選手
陸上競技選手(競歩) 富士通陸上競技部所属
リオデジャネイロ2016オリンピック男子50km競歩銅メダリスト
荒井 広宙選手
陸上競技選手(競歩) 富士通陸上競技部所属リオデジャネイロ2016オリンピック男子50km競歩銅メダリスト
長野県中野実業高等学校 福井工業大学
PROFILE
1988年5月18日生まれ。長野県出身。中学時代から陸上部に所属し、長野県中野実業高校2年生から競歩を始めた。福井工業大学に進学後も陸上部で競歩を続けていたが、3年次からは競歩指導者として実績のある内田隆幸コーチ(2021年文部科学省スポーツ功労者として顕彰)の指導をうけるため石川県に転居し練習を続けた。卒業後は石川県内のホテル(北陸亀の井ホテル)に所属し競技を続けた。2013年からは自衛隊体育学校に所属。恵まれた練習環境の中で成績を伸ばし、2015年の日本選手権50km競歩では自己ベストをマークし初優勝。同年の世界陸上競技選手権(北京)でも4位入賞を果たした。そしてリオデジャネイロ2016オリンピック50km競歩に出場、日本競歩界で初のオリンピック大会での銅メダルを獲得した。また翌年2017年の日本選手権で2度目の優勝、世界陸上競技選手権(ロンドン)では銀メダルを獲得した。2018年には世界競歩チーム選手権において、個人・団体ともに金メダルに輝いた。その後2019年4月から富士通所属となり、日本競歩界の未来を輝かせる更なる躍進が期待されている。荒井 広宙選手の学生時代は・・・
競歩で全国で戦える先輩に憧れて、高校2年から始めた
高校では怪我が多く、長距離の練習について行けない事が多かったです。そんな時、競歩でインターハイに出場した先輩がいて「競歩で全国と戦える先輩が同じ部活にいる」と興味を持ったのが競歩を始めたきっかけでした。その先輩に憧れて高校2年生からは競歩を始めました。当時は今よりもっとマイナーなスポーツというイメージがあり、競歩をしているのは、学校でも私と先輩の二人だけでした。ただ競歩は、中学校の大会では採用されていなくて、みんな高校生から始めるのでスタートラインがほぼ同じなんです。なので努力次第で結果が出せるかなと思ったのも始めるきっかけの一つになりました。しかし高校時代はインターハイにも出られなかったし、あまり成績も残せなかったので高校卒業と共にやめるつもりでした。そんな私の背中を押してくれたのが、当時の陸上部顧問の先生でした。「せっかくここまでやってきたんだから、大学でも続けてみたらどうだ」と声をかけてもらい、北信越エリアでは競歩の強い福井工業大学に進みました。
大学から社会人へ、そしてオリンピックのメダルへ
自衛隊体育学校なら、徹底した管理で練習に集中できる
社会人になってからは2011年の世界陸上競技選手権(大阪)に出場(50km競歩10位)、翌年のロンドン2012オリンピックは落選して出場は叶いませんでした。この落選があり「このままではいけない」と思っている時、縁があり2013年に自衛隊体育学校所属となりました。これによってより練習に集中できる環境が整いました。ご存知のように自衛隊体育学校には陸上以外にも様々なスポーツ選手が所属しています。トレーニング環境はもちろん生活面でのサポートも徹底しているので、選手にとっては最高です。私も練習に集中できたことで日本選手権では初優勝ができ2016年、大きな夢だったリオデジャネイロ2016オリンピックに出場を果たし、選手として最高の結果を残すことができました。
今でもオリンピックは鮮明に覚えていますが、やはり特別な舞台でした。国を挙げたお祭りみたいな盛り上がりで、テンションもマックスになりました。でもスタートラインに立つと、いつもゴールできるのか怖くてたまらなくなります。そんなプレッシャーの中で必死に競技に集中し、日本人として初のメダルを取れた時は、「ようやくお世話になった皆さんに恩返しができる、競歩界に貢献できる」という嬉しさと安堵感でいっぱいでした。
荒井 広宙選手からのワンポイントアドバイス
まずは正しいフォームを身につけることから始めよう
(1)ストロール・・・走りでいうジョギングのようなもので、ゆっくり歩く練習です。私の場合は練習はこれだけという日もありました。ただこのストロールで意識するのはフォームや動きが崩れないように歩くことです。時間は40〜60分程度です。この時、足のスライドを広げながら、腕を振る角度を意識しながら歩くことが大事です。
(2)ポイント練習・・・4kmを5本というようにレースペースに近いスピードで歩く練習です。この練習を毎日ではなく週に3回くらい、集中して歩くようにしていました。実際のレーススピードで歩くことは大事ですが、毎日だと疲れがたまったりして怪我のもとになることもあります。なので体にインターバルを与えながら、効率の良い練習をすることも大切だと思います。
このスロトールとポイント練習を組み合わせることで、きつい練習で疲労した体を休ませて長距離の競歩を戦える強い体を作っているのです。また練習後のストレッチなどは必ず毎日やっていましたし、必要であれば腹筋や背筋、下半身の筋トレもいいと思います。そして私からのアドバイスですが、競歩はルールが厳しい競技なので歩き方の技術が要求され、フォームがすごく大事になってきます。なので最初に正しいフォームを身につけることはすごく大事だと思います。この基礎がしっかりしていれば記録を目指すことができます。大事なことは、練習、食事などの栄養、疲れを残さない休養。この3つをバランスよく組み入れるようにしてください。
※掲載内容は2022年4月の取材時のものです。
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