【特集】高平慎士選手からの高校生へのメッセージ | 日本の学校

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アスリートからの熱いメッセージ

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高平 慎士選手 プロフィール

高平 慎士選手

陸上選手(富士通所属) 北京オリンピック銅メダリスト

PROFILE

1984年7月18日生まれ。北海道出身。子どもの頃から野球を始めるが、地元では俊足で有名だったことから中学からは陸上部に所属。高校2年のインターハイ200mで北海道高校生記録を出し優勝、国体の400mでも優勝を決めるなど「マルチプレーヤー」と言われていた。順天堂大学に進学後は2004年のアテネオリンピックに出場し4×100mリレーで4位に。そして富士通に入社後の2008年には北京オリンピックに出場。4×100mリレーで第3走者を務め、見事銅メダルに輝いた。陸上短距離界において日本人のメダルは快挙といわれ、来年のベルリン世界選手権、そして4年後のロンドンオリンピックでの活躍も期待される。

高平 慎士選手の学生時代は・・・

「この子はオリンピック選手になる」と言われて陸上競技へ

高平 慎士選手写真
 小学校の頃から少年野球チームに入っていましたが、当時から学校内では足が速かったんです。小学校4年の時には、先生に勧められて小学生の全国大会に出ました。これが初めての陸上競技大会です。結構、地元では足が速い子で有名だったんですよ(笑)。
 そして5年生の時に、ある中学校の先生に「この子は将来、オリンピック選手になる」と見初められて(笑)、「うちの学校に来て、陸上をやってみないか」と誘われたんですよ。当時、野球で北海道で2番目に強いチームに入っていたし、陸上でも全国で7位までいっていたので、団体競技か個人競技か、という点で少し迷いました。勝敗が自己責任で、誰のせいでもないという点に魅力を感じ、陸上を選びました。このように話すと、すごくしっかり将来を見据えた小学生みたいですが(笑)、結局はどっちが楽しいか、ということを重視しました。
 中学校から陸上部に入り、高校はインターハイ常連校といわれるようなスポーツの強豪校に進みました。その中で競技の楽しさはもちろん、陸上を通して広がる人間関係がすごく重要だと感じていました。良きライバルがいて、意識するからこそ自分も頑張れると感じるようにもなってきて、楽しさが膨らんだようでした。
 中学時代に、ハードルで北海道4位になったので、高校でもハードルを続けていました。でも、高校2年生のとき、インターハイで200mに出場する機会があって、その時、当時の北海道高校生記録で優勝できたんです。このインターハイ優勝の頃から、200mが自分の特性を活かせる種目だと意識するようになり、順天堂大学に入ってからは、200mに絞り込むようになりました。

アテネと北京、2度のオリンピックを経験して・・・

北京では、自分と仲間を信じてレーンだけを見て走った

高平 慎士選手写真
 大学時代、大阪の世界陸上と北京オリンピックに出てみたいという気持ちはありました。でも実際にオリンピックを意識したのはアテネに出場が決まってからですね。まさか出られるなんて思っていなかったし、何となく自然に決まってしまって「こんなのでいいのかな」という感じでした。だからプレッシャーもなかった。アテネで感じたことは「これだけ世界中が注目する大会ってすごい!こんなところに自分がいていいのか」くらいで、何がなんだかわからないうちにアテネに行って、スパイク履いてパーンという音とともに走っていたって感じでした(笑)。
 今年の北京は2度目ということもあって少し落ち着いて臨めました。「この10万人の観客のどこに親がいるのかな」なんて考えながら(笑)。それにリレーでは朝原さん、末續さんといった経験豊かな選手の方と一緒だったので、色々と教えてもらえたし、安心できました。塚原君もそうだったと思いますよ。
 オリンピックの雰囲気はやはり特別です。4年に一度の大会だと思うと、出場できたことも嬉しいし、「この雰囲気を楽しみたい!」と思えました。とはいえ、決勝戦でトラックに立った時は、さすがに緊張しましたね。変な高揚感があって、メダルへのプレッシャーがあんなに苦しいとは思いませんでした。ただ、いざ走り出したら、朝原さんに無事にバトンを渡すことしか考えられませんでした。
 自分と仲間を信じて、レーンだけを見て走れたのは、2年間メンバーが変わらず練習できていたことも大きかったかもしれません。バトンパスでも「失敗する」という考えが全く浮かばないほど、信頼関係が築かれていたと思います。
 そして3位に入った時は最高の気分でした。自分たちが手にした初めてのメダルは、いろんな人の思いがこもっていて、特別の重さを実感できるものでした。

高平 慎士選手からのワンポイントアドバイス

楽しんで練習できなければ、意味がない

高平 慎士選手写真
 高校時代は、基礎練習と、それ以外のメニューはその日の体調や練習の流れを考えて全部自分で考えてやっていました。もちろん先生に相談したり、アドバイスはもらいましたが。
(1)基礎練習・・・走る、跳ぶといった陸上スポーツに一番大事な基礎練習を充分にする。体をつくり、筋肉を鍛えるためにも、ストレッチと併せて毎日欠かさずしていました。特に中学時代は、あらゆる競技の基礎練習ばかりでした。
(2)長・短距離を走る・・・自分で決めて何本かを集中して走る。この時、タイムはもちろんですが、走り方やフォームにも注意して走ることが大事です。
(3)on/offをつける・・・練習はただ長くやればいいというものではありません。練習は集中してすることが大事。そして体を休める時はちゃんと休息をとることも大事です。切りかえをを上手にすることで、精神的にも集中できます。
(4)きれいに歩く・・・僕はきれいに歩くことをいつも心がけていました。それは足の動きにも関係してくるので、フォームや足の向きなどを考えて歩くように習慣づけると、タイムにもプラスになると思います。また、歩き方は、骨格にも影響してくると思うので注意してください。

以上が僕の学生時代の練習です。陸上競技の中でどの種目をするにしても、やはり走る、跳ぶといった基礎練習は重要だと思います。この基礎ができたうえで種目の専門練習に取り組むようにしてください。そして、基礎とともに大事なのは気持ちです。何より自分が楽しんでやれることが大事だと思います。人からやらされる練習より、自分の意志で取り組むことが確実に身につくと信じています。

高平 慎士選手からみんなへメッセージ

みんなに感謝する気持ちを持ってほしい

高平 慎士選手写真
 僕の今後の目標は、近いところだと、来年のベルリン世界選手権でファイナリストに残ること。そして夢は個人で世界のメダルをとることです。でも、もっと大きい夢として持っているのが、自分が走ることによって人を感動させたい、ということです。たまに母校の高校に帰ったりすると、後輩たちが目を輝かせてくれるんですよ。それが嬉しいし、やっていて良かったと思えるときでもあります。メダルをとって思ったことは、練習は、辛いことや苦しいことが99%です。でも、その他の1%の楽しさが99%より大きいから頑張れるし続けてもいける。今の楽しさはいろんな人の協力があってこそだと思っています。
 僕は皆さんに、スポーツだけではなく何に取り組むにしても、みんなに感謝する気持ちを持って挑んでほしいですね。そして、いいときも悪いときも、手をさしのべてくれる信じられる友を作ってください。

※この記事は2008年12月に取材したものです。プロフィール等は取材時点のものですので、ご了承ください。

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株式会社JSコーポレーション 代表取締役社長 米田英一