PROFILE
2000年7月14日生まれ。兵庫県神戸市出身。兄二人の背中を追うように5歳から柔道を始める。夙川学院中学校(現・夙川中学校)に進学すると練習の成果を見せ始め、中学3年生の時に全国中学校柔道大会で初優勝をした。夙川学院高等学校(現・夙川高等学校)に進学後はメキメキと頭角を現し、2016年の全日本カデ柔道体重別選手権大会で優勝、講道館杯全日本柔道体重別選手権大会では高校1年生ながら3位入賞を果たした。2017年にはグランプリ・デュッセルドルフで優勝を飾り、IJF(国際柔道連盟)ワールド柔道ツアーを史上最年少で制した。続く全国高校選手権では個人戦・団体戦の2冠を達成。高校2年生の時に講道館杯で初優勝し、3年生では兄・一二三選手と共に初の世界選手権同時出場、史上初の兄妹同時優勝を達成、同時に兄妹揃って世界ランキング1位になった。2019年に日本体育大学に進学すると8月の世界選手権で2連覇、その後東京2020オリンピックの代表にも選出され、のちに代表に内定した兄と共に1年延期となっていた東京2020オリンピックに出場。オリンピックで日本の女子柔道が唯一金メダルを獲得していなかった階級での優勝を決め、史上初の兄妹同時優勝に輝いた。その後も世界選手権をはじめ国内外の大会で優勝を飾り、次のパリオリンピックでもメダルが期待されている。阿部 詩選手の学生時代は・・・
日本一になった兄が、私にとって追いかけたい目標になった
そんな私の柔道に対する意識が少しずつ変わってきたのは、夙川学院中学校(現・夙川中学校)に進学してからでした。試合でも徐々に勝てるようになってくると「もっと強くなりたい!」と思うようになり、練習にも積極的になりました。でも一番大きなきっかけは、兄が日本一になり、世界大会に出場するようになったことです。強い兄の姿を見ているうちに「私も兄のように強くなりたい」と刺激を受けたからです。私が柔道を始めた5歳の時から、ずっと柔道に取り組む兄の背中を見てきました。その兄が日本一になり、私にとっては追いかけたい目標になっていました。中学生になると毎日4時間の練習も頑張れるようになったし、どうすれば強くなれるかという意識を持って臨むようになりました。
そして私がオリンピックを意識しだしたのも13歳、中学生の時でした。この年、東京でのオリンピック開催が決まったんです。同時に私のオリンピックへの挑戦もスタートしました。国内の大会でも徐々に手応えを感じていましたし、夙川学院高等学校(現・夙川高等学校)1年生の時にはグランプリ・デュッセルドルフで初めての国際大会優勝も果たしました。また全国高校選手権でも優勝すると、私自身、大会で勝ち続ければオリンピックに近づくと強く信じるようになりました。
日本体育大学に進学、そして掴んだオリンピックの金メダル
もっと強くなりたい、オリンピックで絶対に優勝するんだ!
柔道の国際大会であるグランプリ・デュッセルドルフ、グランドスラム東京で初優勝したのも2017年、そして世界選手権に初めて出場したのは2018年、高校3年生の時でした。この頃には私の中に、「オリンピックで絶対に優勝するんだ」という強い思いがありました。また卒業を前にして、実業団からもいくつか声をかけていただきましたが、将来、大学に行って拠点があれば大学で指導者になるという選択肢もあるのではと考え、兄も進んだ日本体育大学に進むことに決めました。
大学に入ってからもグランドスラムや世界選手権とたくさんの大会に出場しましたが、どの大会でもプレッシャーを感じたことはありませんでした。「この試合で勝って、もっと強くなりたい!」という気持ちの方が強かったんです。そして目標だったオリンピックの出場が決まったのも大学時代でした。一年遅れて開催されましたが、「これがオリンピックなんだ」というのが最初の印象でした。うまく表現することが難しいのですが、他の試合や大会とは違った空気感があります。残念ながら東京2020オリンピックは有観客ではなかったので、それまでのオリンピックとは異なる部分が多いとは思いますが、注目度やメディアの多さ、選手たちの緊張感もオリンピックならではだと感じました。その中で兄妹揃って優勝し名前を知ってもらえたことは、私にとって人生を変えるほどの大きな出来事でした。
阿部 詩選手からのワンポイントアドバイス
練習の中で課題を作り、ひとつずつ克服することで強くなる
(1)朝練習・・・朝は走ることがメインです。スポーツの基本と言われますが、柔道でも重要な下半身を鍛えるためには、走ることが欠かせません。
(2)補強運動・・・練習に入る前には、基本的な腕立てや腹筋、スクワットなどを取り入れた運動をします。これは瞬発力やスピード、筋肉を鍛えて体力をつけるための運動です。毎回、3〜40分行います。
(3)打ち込み・・・立ち技の打ち込みは、一人または二人で相手を投げるまでの動作を繰り返し練習します。正確な技をかけるための基本の練習で、反復して身体に覚えさせることが大事です。また寝技の打ち込みでは様々なポジションで練習すると効果的です。
(4)乱取り・・・実戦形式で、相手と技を掛け合い・攻防する練習です。練習の集大成のようなもので、寝技なら1分を15本で2セット、立ち技なら90分、60分、30分と時間を決めて技が決まるまで、そして納得がいくまで続けるハードな練習です。
かなりハードな練習でしたが、勝つためには必要なことだと思って続けていましたし、高校当時は質より量を中心で練習していました。その中でも私が一番力を入れていたのは、やはり試合を意識した乱取りの練習でした。常に実戦を意識しながら、自分の弱い部分があれば課題として潰していく。苦手な部分を練習で克服するようにしていました。私が皆さんにアドバイスできるのは、一日、一日の練習の中で課題を作り克服していくことが大事だということ。そして最初は受け身をしっかりやって、打ち込みで基礎をしっかり身に付けることが上達につながると思います。
※掲載内容は2023年6月の取材時のものです。
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