PROFILE
1997年8月9日生まれ。兵庫県神戸市出身。テレビで見た柔道に刺激をうけ6歳から「兵庫少年こだま会」で柔道を習い始めた。三人兄妹の真ん中で子供時代は兄妹みんなが柔道をしていたこともあったが、後に本人と妹だけが柔道を続けるようになった。小学校時代から高校の柔道部に出稽古に行くなど、当時から才能をのぞかせていた。神戸生田中学校に入学してからは2年生の時に全国中学校柔道大会で優勝、3年生では階級を上げ2階級制覇を達成し、頭角を現していった。小学校時代から指導を受けていた神港学園神港高校(現:神港学園高校)に進学してからは1年生で全日本カデ柔道体重別選手権大会や全国高校選手権で優勝、2年生ではインターハイやユースオリンピック、全日本ジュニアや講道館杯でも優勝を果たし柔道界で大きな注目を集めていた。特に講道館杯では高校2年生での優勝は史上初でもあった。高校卒業後は日本体育大学に進学し、2年生の時に世界選手権で初優勝を飾り、20歳にして世界チャンピオンとなり世界ランキングも1位となった。また翌年の世界選手権では2連覇を果たし、そのうえ妹の阿部詩選手も優勝したことで、史上初の兄妹同日優勝となった。卒業後はパーク24に所属。コロナウイルスの影響で1年延期となった東京2020オリンピックの代表を死闘の末に掴み、2021年に開催された東京2020オリンピックでは兄妹揃って出場、金メダルの快挙を成し遂げた。その後も世界選手権をはじめ国内外の大会で数々の優勝を飾り、パリ2024オリンピックでは2連覇を達成。柔道家・野村忠宏氏が持つオリンピック3連覇を超える更なる記録が期待されている。阿部一二三選手の学生時代は・・・
全国大会に出られなかった悔しさが、頑張るバネになった

中学生になると柔道部には入っていましたが、実際の練習は後に進学する神港高校で行っていたので、授業が終わると毎日通っていました。中学生だった僕が体の大きな高校生に混じって練習を続けさせてもらえたことで、強さの下地が作られたと感じています。中学時代は全国大会にも出場できるようになり、オール一本勝ちで優勝することもできました。柔道を始めた時からの夢だったオリンピックに近づいていることも感じ始めていた頃でした。特に神港高校に進学してからはインターハイをはじめ、ユースオリンピックや全日本ジュニアなど、目の前の大会で確実に結果を残せたことで、オリンピックへの思いはますます強くなっていきました。
日体大から社会人へ、そして挑んだ夢のオリンピック・・・
1年延期、それでもオリンピック出場という強い気持ちがあった

大学卒業後にはパーク24に所属し、東京2020オリンピックを目指していました。ところが新型コロナウイルスの影響で異例の1年延期となり、なおかつ代表選考の大会も延期になりましたが、気持ちの上ではブレることなく、「オリンピックに出場する」という強い思いを持ち続けました。そしてついに掴んだオリンピックの代表。残念なことに東京2020オリンピックは無観客でしたが、それでもやはり独特の雰囲気があり、他の国際大会とは全く違った特別な大会という印象を受けました。どの競技も同様に選手たちの気合や緊張感のすごさも感じました。僕自身、ここまでくることも大変でしたし、やっとスタートラインに立てた思いと、これからの試合に対する負けられない思いを強く感じていました。だからこそ、手にした金メダルは重くて嬉しい気持ちでいっぱいでした。そして3年後のパリ2024オリンピックではまた異なるオリンピックの雰囲気を経験し、2連覇を達成できたことは忘れられません。どのオリンピックの試合も忘れられませんが、中でも苦しかったのはパリ大会の団体戦決勝です。個人戦とは異なる試合の流れがあるので難しく、特に開催国フランスとの決勝戦は、苦しさや悔しさの残る戦いでした。
阿部一二三選手からのワンポイントアドバイス
練習は継続が一番、そして課題を持った練習を心がけよう

(1)朝練習・・・朝は時間が短いので、ランニングトレーニングがメインでした。下半身を鍛えることはもちろん、持久力を養うのにも効果的なトレーニングです。あらゆるスポーツにも繋がるので、まずは走ることから始めてみるのもいいと思います。
(2)基本練習・・・技を覚えるための基本の練習で、技を仕掛ける手順や構造、技に入る動作などを繰り返し練習して身につけていく「打ち込み」です。特に初心者のうちは、しっかりと動きを身につけておかないと怪我の原因にもなるので注意が必要です。
(3)実践練習・・・基本を身につけたら、次は実践的な練習になります。さまざまな立技を相手と互いに掛け合い、投げたり投げられたりを繰り返す練習で、乱取りとも言います。実際の体さばきや技の掛け方、力の使い方などを実践で身につけていきます。僕は常に、どうすれば自分の技で相手を投げられるかを考えながら練習をしていました。特に僕は豪快に投げられる「かつぎ技」が好きでした。
(4)研究・・・自分の弱い部分や苦手な技などの克服方法を研究することも大事だと思います。その上で補強となる反復練習を取り入れていました。得意な部分を伸ばすことと同じくらい、弱点を無くすことも強くなるためには必要です。
高校時代は毎日4時間の練習をこなしていました。僕からアドバイスできることは、とにかく練習をすること。そして、課題を持った練習を心がけることです。毎日の努力は必ず身につき、力になると信じています。また練習と同じくらい大事なことは体のケアです。練習前後にはストレッチやマッサージをしてケアをすることで、怪我の防止につながります。さらにもう一つ僕が柔道から学んだことは礼儀です。勝ち負けに関係なく対戦相手や関わる人たちへの礼儀、そして感謝の気持ちを持って努力をする大切さを皆さんにも学んでほしいと思います。
※掲載内容は2024年11月の取材時のものです。
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